111話 ページ14
…
大毅「あ、A。」
夏休み初日の朝。
眩しい日差しに照らされて、倒れそうな熱気に早くも帰りたくなっていた私の目の前に現れたのは
夏の太陽が誰よりも似合う、大好きな彼で。
こんなに暑いのになんでそんなに爽やかなんだろう。
彼の額から流れ落ちてくる汗でさえ、かっこよく見えてしまう。
大毅「制服…ってことは補習？」
自然と私の横に並んで歩き出すから、胸の奥がぎゅうっとなる。
こんな風に並んで歩くのなんていつぶりだろう。
愛美ちゃんがいないから、普通に喋ってくれるのかな…。
「うん、英語の。…大毅も？」
ほんとは、知ってるけど。
大毅「せやねん、久々に英語で赤点とったわ〜。補習があるって知ってたらもっと頑張ったんやけどな」
はは、って暑そうに汗を拭って笑う。
サッカーの練習着のTシャツをパタパタ仰ぐから、ちらちらとその綺麗な鎖骨が見え隠れして。
ああ、やばい。
ただでさえ今日は気温が高くて暑苦しいのに
もっと体温、上がっちゃうよ…。
大毅「Aも英語の赤点なんて中学以来、やろ？」
彼の言葉に、心臓がドクンと跳ねる。
…なんで、そんなこと覚えてるの？
私大毅に、毎回テストの点数教えたりなんてしてないのに…。
きっと彼に深い意味はないだろうし
偶然知っていただけに決まってるのに
こんなにドキドキしちゃうなんて
こんなに顔を赤くしちゃうなんて
私ってほんと、大毅の前だと単純すぎる…。
大毅「淳太に怒られた？」
火照る頬を押さえ、なんとか冷まそうと必死な私とは裏腹に
どこか楽しげな表情で私に話しかけてくる大毅。
…今日はずいぶんいっぱい話してくれるんだな。
嬉しい、いつもこうだったらいいのに…なんてね。
「うん、ちょっとだけ…」
淳太に赤点のテストを見せたら、普段から勉強しとかないからやで、って注意はされた。
けど全然怒ってはなかったな。そのあとすぐテストお疲れ、ってにこにこしながらプリンくれたし。
ほんと、淳太って私に甘すぎる…。
そっか、って淳太の話になると嬉しそうな大毅。
いつもはイジってばかりだけど
昔から淳太のこと大好きだもんね。
そんな他愛ない会話を交わしているうちに
あっという間に学校に着いてしまった。
…あーあ、この時間がずっと続けばいいのに
なんて、叶わない夢を見ながら教室に入る。
…
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作者名：ホワイトモカ | 作成日時：2023年11月4日 3時
