じゅういちわ ページ11
「びっくりするほど上達しませんね、私」
「焦ることはないだろう」
「構えの時点で躓いてますが」
そうなのだ。アイビスだとやっぱり大きいので抱えて持っても安定しづらい。持ち方が悪いのかこれは。
「東さん、これ固定して撃てるようにバイポッドでしたっけ…付けてほしいです」
「確かに固定した方が撃ちやすいか」
「抱えて撃てるのは多分東さんくらいですよ」
全長も重量もあるくせに置けないなんてただの鈍器。振り回すより振り回される方だけど。
いやでも振り回せたら格好いいか…？そうだ筋トレしよう。筋肉は全てを解決する。お願いマッスルだ。唸れ拙僧の筋肉。
「そういえば、何やら上層部が派閥に分かれているらしいじゃないですか。東さんは何が一番大切だと思いますか」
「･･･市民の安全、だろうな」
少し考えてから答えた東さんになるほどと頷く。
「私は…私達は本来、戦争とは関係なく平和を享受して当たり前の日常を送るはずでした。だから、近界民を殺すように命令されるのは嫌です」
「なら玉狛派か？」
「いえ、襲ってきた近界民は殺します。そうでなくとも利用できるかどうかで考えます。ただ、命令されたくないだけです」
「そこははっきりしてるんだな」
東さんは驚いたように目を細める。
「当然です…殺す気でやらなきゃこっちが殺されるかもしれない」
「嗚呼。そうだな」
「だけど、我儘かもしれませんが、他の人にはそうであって欲しくないんです。それって手を汚すってことじゃないですか。その汚れって多分、一生落ちないと思うんです」
「･････」
原作で遠征についての描写がなかったからどんなものだったか分からないが、死体は見慣れても殺しはしてないと思いたい。
「本当は誰かに危害を加えることにも慣れてはいけないんだと思います」
「そうだな…」
わざわざ言うまでもなく東さんだってそれは分かっているだろう。現状が本来であればどれだけ異常なことなのかも。
だからこそ、私が最優先にしたいのは上層部の掲げるもののどれでもない。
「東さん。市民の安全もボーダーという組織が掲げる大義としては大切です。でも、私は最前線に立つ若者の未来を一番に守りたいと思います」
「それは…」
「本来なら大人の庇護下にあった筈の我々が保有する当然の権利でしょう？」
誰しもが持っているはずのもの。けれど若者が主戦力となるボーダーではしばしば目を瞑られるもの。
東さんは私の眼を見て困った顔で頷いた。
「その通りだな」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 43人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りんか(プロフ) - 内容めっっっっちゃ好きです……。更新から1年たってますがまだ更新されると信じて……頑張ってください！ (11月3日 1時) (
レス) id: d3fb5e7475 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：葛城那由多 | 作成日時：2022年6月10日 16時
