▽ ページ20
日々は思ったよりも平穏なものだった。
騒がしい男子とは違い、グルッペンは休み時間にただ静かに難しそうな本を読む。
窓から吹く春の風に混ざって彼の甘い香りが私の元へ運ばれてくるのは少し気になるが、読みかけの文庫本を開けば嗅覚すらも遮断された。
本の中で行われる男女の愛憎劇をヤジウマのような気持ちで夢中になって読んでいたが、トンと何かが机に置かれる音に現実の世界へと戻される。
「日誌、あと書いとけ。」
「あぁそっか、了解。」
黒い冊子を開いて今日の日付のページまで捲る。
癖のある右上がりの達筆が午前中の授業とその内容を記していた。
日直と書かれた欄にも同じ筆跡で一つの名前。
「私の名前知ってたんだ。」
思った事がそのまま声に出てしまう程度には衝撃的だった。
光と影という違いすぎる世界で生きる私の名前を、まさか彼が記憶しているなんて夢にも思わなかったから。
「Aだろ？クラスの奴の名前くらい覚えてる。」
「へぇ…、で？自分の名前はまた忘れちゃったの？」
「お前が書け、公式は覚えられなくても俺の名前くらいは憶えてるだろ？」
そういうとこだぞグルッペン・フューラー。
自分の名前は当然記憶されているという自信が癇に障るんだってば。
彼の言う通り公式は覚えてないくせに、しっかりとフルネームを記憶している己の頭を殴りたい。
目を逸らすように日誌の文字を追って、私は口をぱかりと開けた。
１限目の英語の横に、授業内容と共に書き加えられた一文を見てしまったからだ。
”Aさんが居眠りをしていた。”
ただのチクりだった。
慌てて他の欄も見てみると１限目同様、最後に私の悪事がおまけ感覚で添えられていた。
まさか４限目で鳴ったお腹の音にも気付かれていたとは。
あの時は素知らぬ顔で前を見ていたくせに、内心笑ってやがったな。
悔しさから午後の授業はまるで張り込みをする刑事のような目つきで隣の席ばかりを見ていた。
一瞬の悪事だって見逃さないと思っていたのに、グルッペンは涼しい顔でそつなく授業をこなしてしまった。
結局私はグルッペンくんの髪がキラキラ反射して眩しかったと、褒めてるのか貶してるのかよく分からない事を書くしかなかったのだ。
当然翌日、私たちは揃って職員室に呼び出されお叱りを受けた。
こんな事は初めてだと、グルッペンは面白そうに笑っていたが私だってこんな事初めての経験だ。
真面目にやれ、なんて。
人生で誰かに言われるなんて思ってもみなかった。
やはり彼と関わると碌な事にならない。
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みゆき - 企画発案の楓様、運営のそれがし様、そして参加なさった作者の皆さま方素敵な作品を有難う御座いました。あまりにも素敵で心臓が痛かったです。第一声にたまんねぇなと思わず出てしまいました。作者の皆さまお疲れ様でした。 (2018年5月5日 1時) (
レス) id: 01225c6438 (このIDを非表示/違反報告)
H2O(プロフ) - 作者の皆様方、お疲れ様でした。総統推しの一人として皆様に札束を投げつけたいです好きです。皆様のグルッペンが見れてとても楽しく悶えさせて頂きました。ただ残念な事に私の推測が外れてしまったのでもう一度皆様の作品全て見返して出直してきます…。 (2018年5月5日 0時) (レス) id: b0c2c544a7 (このIDを非表示/違反報告)
イズ - 素敵な企画を発案された楓様、運営されたそれがし様、参加された作者様方有難う御座いました。皆様それぞれの個性が出ていたと思います。(まじ最高)あーいいすねー^^ 皆様お疲れ様でした。 (2018年5月4日 23時) (レス) id: 3cbf0f5749 (このIDを非表示/違反報告)
大仏 - 2つめのお話が雛菊様で5つめのお話がそれがし様でしょうか……こうしてたくさんの方の文章を拝見すると、行のあけかたが各々違っていたり…文の特徴を見極めながら勝手に推測するのが楽しいです。間違っていたら申し訳ないのですが…！！ (2018年5月3日 0時) (レス) id: 6ecce97bae (このIDを非表示/違反報告)
H2O(プロフ) - 連投失礼します！事後報告ですが皆様のtwitter、フォロー送らせていただきました！よろしくお願いします！ (2018年4月28日 23時) (レス) id: 3a7896640d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：グル推し一同 | 作者ホームページ：
作成日時：2018年4月21日 21時
