続！“個性”「文豪ストレイドッグス」 (ページ35)

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七十二話ページ35

「悠花ちゃん、頑張って下さい」

「あはは…。まあ、努力はするよ」

八百万の応援を苦笑いと共に受け取って、悠花は演習試験の会場に足を踏み入れた。

オールマイトＶＳ朝霧悠花。

会場、グラウンドβ。

＿＿＿＿＿＿＿＿開始！！

開幕の合図と同時に繰り出された猛烈な風圧を、悠花は【汚れちまつた悲しみに】で跳ね除けた。

「……よし、逃げよう」

一瞬で実力差を見切りそう判断した悠花は、【夜叉白雪】と【ヰタ・セクスアリス】を発動する。

「エリスちゃん、白雪、足止めよろ☆」

「…はぁ。人使いが荒いわね」

「エリスちゃん、人じゃないじゃん」

悠花はそれだけ言うと、踵を返してオールマイトと鉢合わない経路を考えながら駆け出した。

オールマイトは、目の前に立ち塞がる奇妙な二つの人影に歩みを止めた。

金髪碧眼の幼い少女は、フリルたっぷりの甘ロリのようなナース服を着て、見上げるほどの宙に浮いていた。

その周りには、大小様々な注射器が漂っていて、全ての針が正確にオールマイトを狙っている。

もう一人は、白いつるりとした仮面に顔が覆われた女武者だった。足は地についておらず、それどころか足そのものがどこにも見えなかった。長い頭髪は、風ではないものによって緩く広がり波打っている。

手には、鍔のない刀鞘が握られていた。

「…エリス少女と……、そちらは確か、白雪と呼ばれていたかな？」

「ええ。わたしはエリス、こっちは夜叉白雪。
…主の命により、わたしたちはここで貴方を倒すわ」

No.１ヒーロー相手に臆することなくそう言ってのけた少女は、指揮官のように片手をすっと上げた。

その手が振り下ろされるのが、戦闘開始の合図となった。

無尽蔵に生み出される注射器がオールマイトを絶え間無く襲う。

だが注射器から逃れようと大きく距離を取れば、夜叉の銀刃が襲い来る。

故に、防戦一方になるしかない。

(…だが、脱出ゲートは私の背後だ。現れた瞬間に捕らえられる)