続！“個性”「文豪ストレイドッグス」 (ページ28)

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六十五話ページ28

空気がジメジメとし始めたある日のこと。

悠花は相澤に残るよう言われ、一人で放課後の教室に居た。

ガラッと教室の扉が開く。

「朝霧、来い」

「はあい」

従順に相澤の後を追う悠花。

まだ何の説明も受けていないが、相澤が説明の必要無しと判断したのなら問題ない。少なくとも今は。

そして悠花が連れて行かれたのは…

「訓練室？ ……ああ、成る程、心操人使くん、“個性”『洗脳』、普通科のC組でしたっけ？」

「お前の情報網どうなってるんだ」

「まあまあ」

訝しげに睨んでくる相澤を窘めて悠花が扉を開けると、そこには案の定、体操服を着た心操人使が。

悠花はダッシュで近づいて手を握る。

「初めまして心操人使くん！私は朝霧悠花、よろしくねっ！」

「はぁ…。ってか、なんで此処に？」

「実は私も知らないんだ！ってことで相澤先生、そろそろ教えて！！」

二人の生徒の視線をその身に受けた相澤は、一つ大きな溜息を吐いた上でこういった。

「これから、朝霧にも心操の特訓に付き合ってもらう」

(あっ、これ、私の『間抜けこの上ないですよ』発言の仕返しを一割含んでるな)

悠花はそれを、これ以上ない笑顔で、二つ返事で引き受けた。

それからの放課後、悠花は殆どの時間、心操の特訓に付き合った。

これはその一例である。

「取り敢えず、このくらいが第一目標だ」(何の前触れもなしに、腕を掴んで悠花を投げ飛ばす)

「いきなりですね！ ……っと」(空中で体勢を立て直し、壁を蹴って危なげなく無事着地)(異能力非使用)

「？ …！？」(目の前で起きたことが上手く飲み込めない)

皆さんお忘れかもしれないが、悠花はヲタクである。

目の前で師弟訓練とか、もうご褒美でしかない。

(あー、今日も心のフォルダが潤うなーっ！)

悠花は心の底から幸せそうな笑顔を浮かべていた。