続！“個性”「文豪ストレイドッグス」 (ページ19)

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五十六話ページ19

一日目、夜。

悠花は用意されたホテルの一室に居た。

「こんばんは、百ちゃん。そっちはどんな感じ？」

通話の相手は八百万だ。

『今日は、UNERI(ウネリ)というヘアスプレーのCMに出演しましたわ』

「あー、ウワバミさんのとこ、メディア露出多いもんねー」

親しげなニュアンスに、八百万が『お知り合いなのですか？』と驚いたように尋ねる。

「ん、まあね」

くるくると片手の人差し指に髪を絡めて弄びながら、悠花は言った。

「そうそう、ウワバミさんの事務所の近くに美味しいフレンチのお店があるよ。もう行ったかな？」

『いえ…』

「そっか。じゃあ、明日のお昼、決まってなかったらどう？マップは送るよ」

『ありがとうございます。行ってみますわ』

「うんうん、感想聞かせてねー」

『ええ。…では、明日も早いですし、おやすみなさい』

「うん、おやすみー」

八百万との通話を終えた悠花は、先程まで座っていたシングルベッドから立ち上がる。

窓から保須市を見下ろす。

記憶の中のアニメや紙面からの情報では、脳無の出現場所は分からない。

(まあ、ヒーロー殺しは分かるけどね)

悠花は備え付けの仕事机の上に、保須市の地図を広げた。

地図というアナログな手段を使ったのは、万が一スマホやタブレット、パソコンの履歴を誰かに見られた時のためだ。
内通者疑惑をかけられるのは面倒くさい。

(『江向通り4ー2ー10ーの細道』……ってことは、ここら辺だな)

地図上で場所を確認した上で、もう一度窓から外を見る。

「さて……どうするべきかねえ」

悠花は、何も知らない街を、薄笑いで見下ろした。