続！“個性”「文豪ストレイドッグス」 (ページ12)

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四十九話ページ12

「んー、どこにしようかなー」

悠花は、四十件の事務所が並んだ紙をぺらぺらを揺らした。
指名は入っていなかったので、この中から選ぶことになる。

「悠花ちゃんは、どんなヒーローになりたいのですか？」

「うーん。明確には決まってなくてねえ」

八百万の素直な質問を曖昧に濁す。

と、そこで、文字の羅列を適当になぞるだけだった悠花の視線が一点に固定される。

(あ、この人って、確か……)

一つ、悠花にとって見覚えのある文字列があった。

『ウィンドヒーロー・アレス事務所』

この名前は、ヒーロー連続失踪事件を調べていた時に見かけたものだ。

(何人目かにいなくなったヒーローと、最後に会っていた人、だよね。
ウィンドヒーロー・アレス。本名、風早(かぜはや)一散(いちる)。年は今年で４２、独身男性。“個性”は……風化、だっけ？風を操って、その風に触れた物を風化させる“個性”)

「……決ーっめた」

希望体験先の用紙の第一希望の欄に、事務所名を書き込む。その途中で、"それ"に気がついた。

途端、ぎしり、と悠花の動きが止まる。

視線だけが、ヒーロー事務所が書かれた用紙と希望体験先の用紙の間を、三往復ほどした。

(……東京都、保須市？)

この後、悠花は、体験先を替えようかと数時間真剣に悩んだ。