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＿
｢こたくん、私帰るね｣
｢え、ああ、ありがとう｣
｢うん、試合がんばってね｣
｢うん｣
大城さんに挨拶をして、元来た道を戻る。出口手前まで送ってくれる皓太くんに甘えて、人が行き交う道を歩いた。時々、知り合いなのだろうひとに、皓太くんが茶化されていて、なんだか悪いことをしてしまったような気がした。
もう少しで出口、というところで、皓太くんの足が止まった。どうしたのか、と思い、彼を見上げると、小さく手招きをされて、傍にある扉に手をかける。そのまま部屋に導かれた。
｢こたくん？｣
｢…葵さん｣
｢どうしたの…？｣
こたくんを見つめたけど、薄暗い部屋では表情が読み取れない。いったい試合前にどうしたんだろう、そう思っていると、皓太くんの腕が伸びて、背中に回った。ふわり、抱きしめられる。
｢…こたくんっ？｣
｢…｣
｢…こたくん、｣
｢ん、…じゅーでん｣
｢え？｣
｢充電、させて｣
ドームに葵さんがおるって新鮮やし、と、珍しいことを嬉しがる声色。優しく抱きしめてくれる両腕に、どれだけの重圧がかかっているか、その時強く見えた気がした。
これから試合、なんだ。期待されているから、その分プレッシャーは凄まじいだろうし、疲れだって溜まってきているはず。そう思うと、私の恋人はすごいひとなんだ、そのひとの隣にいるんだしっかりしなくちゃ、と鼻の奥がつんとなった。
皓太くんの背中にそっと腕を回す。そのまま、力いっぱい抱きしめると、皓太くんはふっと笑った。
｢珍し、葵さんがそんなことしてくれるなんて｣
｢…パワーを分けてあげてるの｣
｢パワー？｣
｢こたくんが背負ってる重荷を、ちょっとでも軽くできるように｣
｢…｣
｢役に立たないのは分かってるけ、…っ｣
言葉が途切れた。感じたことないくらい強い力で、皓太くんが私を抱きしめたから。少し痛いくらいの力を込める腕は、震えていた。
｢なんなんそれ、ずるい｣
｢こ、たくん｣
｢…甘えたなる｣
｢…うん、たまには甘えて、ほしい｣
｢帰ったら、めっちゃ甘えさせて｣
勝てるように全力尽くすから、そう掠れた声が響く。小さく頷くと、皓太くんは気合いをいれたように息を吐く。
そのまま身体が離れて、頬を撫でられて、額に唇が落ちた。その綺麗な指が私の唇を指して、勝って帰ったらここに、なんて言う。
この日の皓太くんは、三者連続三振で、嬉しそうに帰ってきた。
＿fin
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aoi(プロフ) - Ey3467さん» はじめまして＊こちらこそありがとうございます！とても励みになります＾＾ (2021年6月1日 12時) (
レス) id: 4b9a3afcbe (このIDを非表示/違反報告)
Ey3467(プロフ) - はじめまして！aoiさんのお話ほんとに大好きなので更新していただけてほんとに嬉しいです！ (2021年5月31日 12時) (レス) id: 8bada13383 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - よせさん» コメントありがたいです、うれしいです！ (2019年8月4日 11時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - り子さん» うれしいお言葉ありがとうございます＊(頂いたコメントですみません、り子さまのおはなし、私もだいすきです…！) (2019年8月4日 11時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - みやさん» ありがとうございます、嬉しいです＊ (2019年8月4日 11時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：aoi | 作成日時：2019年4月2日 23時
