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「え?」
「うまくいかんくて、イライラをうちに持ち帰ってきて、情けない思うとるやろ」
「いや、そんなこと」
「機嫌悪くて、分かりやすく話さへんかったもんな、俺」
「…まあ、うん」
「は、正直やな」
あ、怒りをぶつけられてる。当たられてる。
ただ、これで龍馬が少しでも前を向けるなら、少しは我慢しようと思った。私だって仕事でうまくいかなくて、龍馬に愚痴を聞いてもらうこともある。
ただ、龍馬の珍しい姿を見ながら、彼の言葉を聞いていると、なんだか胸が苦しくなってきてしまった。俺ほんまはこんなこと言いたないんやぞ、葵を傷付けること言いたないんやぞ、って、言葉の節々から感じ取れてしまって。
ばかだなあ、龍馬。たまには良いのに。そう言ってあげたくなった。でも、彼の不本意な憎まれ口と、そこに生まれる後悔が、私の気持ちをぎゅっと切なくさせる。
「気使って、イライラ持ち帰った俺に触れんかったんやろ。葵は大人やもんな」
「龍馬、」
「当たり障りのない言葉かけて、俺を傷付けないようにしとったもんな」
「…うん、そうだね」
「なんやねん、そんなん、余計にこっちが情けなくなるやん」
「ねえ、龍馬」
ソファーで俯きそうになった龍馬の横に座り、体を彼の方に向けた。そのまま、無理矢理に龍馬の両頬を、私の両手で包んで、上を向かせる。
「下、向かない」
「…」
「……ねえ、龍馬。今まで、たくさん辛い思いしても、うちに持ち帰られないでいてくれてありがとう」
「葵、」
「私ね、今日初めて龍馬がイライラを持ち帰ってきてきたけど、それを見て情けないとかムカつくとか、一回も思ってないよ」
「…」
「むしろ、何も言えない自分が情けなかった。だけど、中途半端なこと言って、余計に龍馬を追い詰めたくなかったの。……ここは、龍馬の癒される場所であってほしいから。だから、」
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aoi(プロフ) - Ey3467さん» はじめまして*こちらこそありがとうございます!とても励みになります^^ (2021年6月1日 12時) (レス) id: 4b9a3afcbe (このIDを非表示/違反報告)
Ey3467(プロフ) - はじめまして!aoiさんのお話ほんとに大好きなので更新していただけてほんとに嬉しいです! (2021年5月31日 12時) (レス) id: 8bada13383 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - よせさん» コメントありがたいです、うれしいです! (2019年8月4日 11時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - り子さん» うれしいお言葉ありがとうございます*(頂いたコメントですみません、り子さまのおはなし、私もだいすきです…!) (2019年8月4日 11時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - みやさん» ありがとうございます、嬉しいです* (2019年8月4日 11時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aoi | 作成日時:2019年4月2日 23時