山吹 ページ23
*橙 のふたり
_
仲間と食事を済ませて帰る、と連絡が入ったのは少し前。明日はオフだし帰りは遅くなるかも、なんて思いながら、皓太くんの帰りを待っていたけれど、なかなかその気配がない。
そんなときだった。携帯の画面が明るくなり、中川皓太、の文字。
「もしもし、こたくん?」
「あ、皓太の彼女さんの携帯ですか?」
電話に出たのは、知らない声だった。皓太くんよりも明るいトーンの色に、思わず声が出なくなってしまう。戸惑う私に気付いたように、その彼は事情を説明してくれた。
飲みすぎてるんで迎えに来れますか?
彼女さんに会いたいって言うてて。
俺らも挨拶したいですし。
そんな言葉を並べられた気がする。軽く潰れてしまっているようで、申し訳なさそうな口振りに、思わず了解してしまった。
ただ、電話越しの音はがやがやしていて、男の人が数人いるようだった。そこに私、入っていけるのかな、声かけられるのかな、と、不安になってしまったのだ。
(こたくんのせいだ…!)
そんな憎まれ口を叩きながら、やっぱり心配で、指定された場所に車を走らせる。少し、どきどきしている鼓動には、知らないふりをしよう。
到着するとすぐ、店員さんに促された。1番奥の個室にいるようで、笑い声が聞こえる。こちらです、と躊躇なく扉を開ける店員さんに、心の準備が、なんて思っても伝わるはずもなかった。
「あ、あの……」
恐る恐る、顔だけを出す。すると、視線が集中したのを感じて、かっと体温が上がるのを感じた。どうしようもできなくて、少し俯いてしまう。
「あ、彼女さんすよね?皓太!お待ちかねの人来たで!」
「…んー、葵、」
当の本人はテーブルに突っ伏して、うつらうつらしてしまっていた。やっと私に気付いて、へら、と緩く笑う。
「葵さんやー」
「こ、こたくん…っ、大丈夫?」
「だめ、あかん、会いたかった」
「何言ってるの、もう…!」
(こ、これは想像以上に出来上がってる…!)
珍しいな、と思う。だから少し心配になった。人に迷惑をかけるような、お酒の飲み方はしないはずなのに。人の心配なんて知らず、皓太くんは嬉しそうな顔をして手招きをした。
「葵さん、ここ」
「…え?」
「俺の隣。ここ」
「……」
座れってことですか、それは。酔っ払いこたくん、動画撮られてますよ…!
そうとは言えず、固まってしまった。
183人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
aoi(プロフ) - Ey3467さん» はじめまして*こちらこそありがとうございます!とても励みになります^^ (2021年6月1日 12時) (レス) id: 4b9a3afcbe (このIDを非表示/違反報告)
Ey3467(プロフ) - はじめまして!aoiさんのお話ほんとに大好きなので更新していただけてほんとに嬉しいです! (2021年5月31日 12時) (レス) id: 8bada13383 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - よせさん» コメントありがたいです、うれしいです! (2019年8月4日 11時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - り子さん» うれしいお言葉ありがとうございます*(頂いたコメントですみません、り子さまのおはなし、私もだいすきです…!) (2019年8月4日 11時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - みやさん» ありがとうございます、嬉しいです* (2019年8月4日 11時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:aoi | 作成日時:2019年4月2日 23時