虹色のパレット (ページ10)

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暫くの沈黙の後、先に口を開いたのは先輩だった

「…一目惚れ、だったんだよ」

「………え？」

黒板の前で向かい合った先輩の薄い唇が動いた

急な言葉だったから何を言われたのか分からなくて聞き返す

「っ、だから、お前のことが結構前から好きだって言ってんの」

いつもとは違う、言い方は少しきついけどそれでもすごく甘い声にびっくりした

綺麗な赤に見つめられ何も言葉が出てこない

先輩の顔は教室を暖かく照らす沈み掛けの茜色のせいで見えない

だけど私の顔はきっと、良く見えているんだろう

コートやらマフラーやらを纏っていても寒さを感じるくらいの時期なのに、体温が一気に上がるのを感じた

こんな真っ赤な顔、見られたくなくてドアの前へ走る

本気ですか？なんて聞けない。聞いたら傷つけてしまいそうで

だから、

「少し考えさせてもらえませんか」

そう言って茜色が輝く道を逃げるように帰った

どこに良さがあったのかわからない

顔なわけないし、そこまで話したこともないんだから中身なわけもない

じゃあどこに？

駅を出るとすっかり暗く染まった景色が私を出迎える

楽しいことだけを考えていられない

それを感じさせるような闇が広がっていた

私のせいで葛葉先輩への周りからの評価が落ちるのは嫌だ

”釣り合ってない”そう言われるのは目に見えていた

家に帰ってからずっとそのことを考えていたせいか、次の日の朝は目覚めがあまり良くなかった

それが4日前