虹色のパレット (ページ8)

今日:13 hit、昨日:4 hit、合計:22,664 hit

【茜色/kzh】その色に染まれたならページ8

.

「そろそろ返事、聞かせてほしい」

いつもより赤く染まる放課後の昇降口

女子生徒の内、半分は彼へ向けての恋心を抱いていると言っても大袈裟ではないであろう葛葉先輩に話しかけられた

あの深紅のような、深緋色のような双眼で真っ直ぐに見つめられると何も言葉が出なくなる

見惚れてしまう

スラッと高い鼻

そこまで大きくはないけどキリッとしていて吸い込まれそうな深い紅色をした瞳

時々見える牙のような八重歯が特徴的な薄い口

そこら辺の芸能人よりも遥かに整っているその顔面はすれ違う人に二度見させる程のものだ

更に肌は日焼けなんて知らないとでもいうように真っ白で

心配になるくらい細いのに身長は見上げるほど高い

一見不真面目そうに見えても、色々彼なりに考えていてやる時はちゃんとやる人

比べるなら彼は太陽のように輝く赤で、私は何色も持っていないただの白

否、水を含みすぎて薄くて見えないような白

赤は画用紙に描いたら目を引くような存在で、薄めすぎた白はもはや何を描いているのか分からないような見えない存在

私と先輩はこんなにも違う

太陽のように輝くという表現が葛葉先輩の見た目を表すのに適しているかどうかと言われたら否だ

彼は月のように静かで近寄り難い存在

ても中身は太陽のように優しくて暖かくて、不器用だけど素敵な人

そんな完璧と言えるような人に告白されたのだ

元々同じ中学で、その頃からずっと憧れていた先輩

叶わないと分かっていても、想い続けた先輩

何かの罰ゲームかもしれない、揶揄って遊んでいるのかもしれない、そう考えるもそんな人ではないことはずっと前から知っている

いつも彼と一緒にいる叶先輩ならまだ、同じ委員会だという接点はあるし家も近く、親同士の仲が良いから話しかけられるのは分かる

でも葛葉先輩は何も接点がない

あることはあるけどきっと覚えていないだろう小さいこと

それなのにこの前、帰ろうとしていたところを葛葉先輩に呼び止められた

好き、なのに考えさせてくださいと言って逃げてきてしまった

だって、夢にも見なかった両想いという世界

それがこんなにも突然に訪れるものなのか