虹色のパレット (ページ11)

今日:11 hit、昨日:4 hit、合計:22,662 hit

● ページ11

その日と同じような時間帯にまた話しかけられた

きっと叶先輩くらいにしか言ってないのだろう

幸い告白されたことは広まっていないらしい

呼び出される覚悟をしていたのは徒労だったようだ

前みたいに、先輩方に釣り合わないとか言われるかなと思っていたんだけど

昇降口から走っていった所を見られたのはファンクラブに入っていなかったか、もしくは権力がないと言ったらおかしいけど、そういう人達だったのだろうか

正直返事なんて決まってないし、何を答えるのが正解なのか分からない

だって、葛葉先輩のことが好きな人はたくさんいる

恋愛感情でも、尊敬の意としても、友情でも、

その中には私よりも多才で、顔が良くて、葛葉先輩に釣り合うような人もいる

私でいいのか、どこがいいのか、

だって私は私の人生の中でもモブ的存在だから

心の中はそんな不安に駆られていた

それを読み取ったかのように、

「無理なら無理だってハッキリ言ってくれ」

そう言った彼の赤は切なげに揺れていた

答えは決まっているのに、考える素振りを見せる私はタチが悪い

「ごめんなさい。付き合えません」

なんて先輩を拒否する言葉

赤い瞳がもっと揺れた

先輩の表情が私の言葉で変わってくれるのが嬉しい

場違いにもそう思ってしまうのはそれほど彼が遠い存在であると自分に再確認させるためでもあるのだろうか

でもそれは一瞬で、すぐにいつもの何を考えているのか分からない赤に戻る

生徒は帰ったか部活に行ったかで昇降口には私たち以外誰もいない

枯葉を転がす乾いた風の音が微かに聞こえるだけ

あの時とは違う

野次を飛ばす生徒もいない

だけど、周りの目が気になってしょうがなかった

この場のでなく、この先の

本当は両想いなのに付き合えないなんて酷すぎる

先輩の彼女になりたい

隣を歩きたい

でもそれは私の見た目とクラスでの立場が許さない

「そう。」

たったこれだけ、

そのたった2文字は直ぐに校舎外から吹き込む風によって流されて行った