虹色のパレット (ページ1)

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【白/kgm】堕天使一方通行理論ページ1

※お相手と夢主が人外

今思えばそう、凄くそれは酷い話ではあるのだが私は一度だけ、掟を破ったことがある。
どこを見ても彩度の少々高くて白い世界の広がる天界にある、唯一の暗くてくすんだ場所。魔界へと繋がる門を決してくぐり抜けてはいけないというもの。
魔界には常に瘴気が溢れており、特に純粋無垢な子供や敬虔な信者はその瘴気を浴びると体が灰と化してしまうという様な危ない場所であった。勿論その入口付近の門には無闇矢鱈に天使が近寄らないように見張りがついている。しかし私はそんな場所に、少しだけ足を踏み入れてしまおうとしたことがある。
事の発端は確か、とある天使の行動であった。
彼女は幼い頃からの数少ない仲の良い、いわば友人であったのだけれど、時折まるで何度も同じ生を過ごしてきたような子供のように見えない物言いや行動があった。例えば、子供達が知るはずのないような昔の話。学校で習わないような、当事者達でなければ知りえない部分。それをあたかも体験していたかのように話すのが得意であったり、例えば、神の語るお言葉一つ一つを咀嚼して、自分にとって利益となるものとそうでないものに分けた。利益となるものを信じ、そうでないものは何も見なかったことにする。お言葉を全て実行できる者はおらず、もしそのような者が居たらそれは天使ではなく神本人、或いは悪魔だと語っていた。神のお言葉は尊いものであると教えられた私にはかなり衝撃的な話であった。
そんな彼女はある日、私だけをあの門の近くへと連れて行った。黒い柵のような扉から大分遠く離れたところ。そこには、壁に穴が開いていて。悪魔がそこから侵入して来たらとんでもないだろうと私が大人を呼びに行こうとすると、彼女はやんわりとそれを制した。

「今から私がやること、よく見ててよ」

そう言うと彼女は、穴からいとも容易く潜り抜けてしまった。まるで少し自分より低い天井のゲートをくぐるかの如く。そしてそこから数歩歩いて、翼を広げた。
その光景は、今でも鮮明に覚えている。ばさり、と音を立てて開いた翼は、墨をじわじわと吸ってしまう和紙のように毛先から黒く染まっていった。衣装も、彼女の顔も何もかも変わったわけではない。ただ翼が黒く染まっていく光景だけで、私は彼女のことを別の種族だと思った。元々は同じ天使のはずなのに。その黒い翼と、隙間から見えるひび割れていく輪っかは非常に私達とはまた違った綺麗さを得てしまったらしい。

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