26話『ルーク』 ページ25
叫び声、帆理が言うに、ナレ果の声が砂漠いっぱいに響いた。
恐怖こそ感じないものの、驚きと困惑で頭が追いついていない。
ただ一つ、あれは良くないモノ。
ルークは、自分の倫理に反するモノである事に違いがないのを認識した。
そして、アレを倒さなければいけないと悟る。
「帆理、くん。何かえいって出来そうな物持ってないかい?あの…なんて言うのかな?取り敢えずえいって出来そうなの」
著しい語彙力の低下を感じながらも、必死に説明しようとするルーク。
それが帆理に伝わったのかは分からないが、同じように「えいって出来るやつですね…」と悩み始める。
今まで生きてきた中で、初めての死の危惧がすぐ其処まで迫ってきているのにも関わらず、未だ『えいってやつ…』と言い続ける二人。
側から見たら、正気を疑わざるを得ないだろう。
「あっ、カッターあります…!」
思い出したかのようにポケットから、カッターナイフを取り出した。
「ん?かったーって何だ?」
えっ、と困惑した表情を浮かべた帆理だったが、最早説明する時間すら惜しい。
刃を出して、何とか立ち向かおうと、刃先をナレ果へと向けるが、その手は震えていた。
刃が出た事で、その仕組みを理解したルークは、帆理の手からそれを奪い、鼻がつきそうな程近づいていたナレ果を切りつけた。
それにより、ダメージを受けたそれは、勢いを失い、よろけた。
すかさず、ルークは背中に蹴りをいれ、地面に転がした。
其処までやった所で、ルークは、後始末を如何しようかと、困った顔で帆理を見つめた。
「ぅあっ?!ルークさん凄いです!」
本当に一瞬の出来事で、驚いたように、呆気にとられていたが、何故かパチパチと拍手をした。
「ぬ、そうか?そうでもないぞ。帆理くんがかったー?を持っていなかったらどうにもならなかったからなぁ」
「そうですかね…?あ、これどうにかしないとですね」
腑に落ちない、といった表情をした帆理だったが、ポケットから短刀を出して、ナレ果に躊躇なく突き刺した。
「ごめんなさい。ごめんなさい…」
だが、実際はそう見えただけであった。
敵を倒すだけなのに、謝り、瞳いっぱいに涙を溜める帆理の心優しさに、ルークは不思議に思いながらも、彼の頭を優しく撫でた。
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泉罪(プロフ) - おわりましたー (2017年4月15日 15時) (レス) id: b8d70dc730 (このIDを非表示/違反報告)
泉罪(プロフ) - 更新しますー (2017年4月15日 14時) (レス) id: b8d70dc730 (このIDを非表示/違反報告)
柊(プロフ) - 終わりました (2017年4月4日 12時) (レス) id: fe844cdf7e (このIDを非表示/違反報告)
柊(プロフ) - 更新します (2017年4月4日 12時) (レス) id: fe844cdf7e (このIDを非表示/違反報告)
怪盗エリン@ぷよテトガチ勢(プロフ) - 更新終わりました (2017年3月30日 14時) (レス) id: a32125eb65 (このIDを非表示/違反報告)
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