【wrwrd】A firm promise【企画】 (ページ23)

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「海軍大臣・・生きておられたのですか・・・」
なんとも言葉が出てこない。
すでに死去していると思われていた人物が、目の前にいる。
その事実が大きすぎるのだ。
「皆遺体もないのに勝手に死んだものと扱いおって。Aでさえ私を幽霊だと言った」
「ふふ。すみません」
聞けば、爆風には巻き込まれはしたが運よく生き残り、現地の住民に救われたのだと。
そして怪我の治癒を待ち、ようやく国へ戻ることはできたころにはすでに終戦を迎えていたのだ。
「俺は約束は守る主義やからな」
自慢気に言った。
先ほどの話の中の、別れ際のことだろう。
彼女は嬉しそうに頬を染めている。
「本部に顔を出そうとは思ったのだが、それ以前にまずはAにあっておこうと思ってな。来るのが遅れてしまった。申し訳ない」
「そ、そんなことが・・・・」

「ところで今日は今まで何をされていたのですか？」
「いや・・それはだな・・」
彼目を泳がせると
「あなたを驚かせたかったんですよ」
彼女がさらっと言った。
彼は気まずそうに頭をかき、
「申し訳ない」
といった。
その後は、大臣不在の軍内の話や彼の現地での話などいろいろな話をした。
そして、あっという間に夕方、２人はそろそろ発車する電車に乗らなければならないとのことだ。

３人そろって本部の玄関に降りる。
「今後はどうされるんですか？」
私が聞くと、
「田舎に帰って籍を入れようと思う」
海軍にはもどらないとのことだ。
「田舎で静かに過ごすことにする」
「そうですか・・それもいいかもしれませんね」
「では、そろそろ行くとしよう」
彼が戻られないというのはかつての部下としてとても残念なことだが、それが彼の判断であるならしかたがない。
そんなことを考えているとふいに彼は言った。

「海軍を・・日本を頼んだぞ」

敬愛する上官からの言葉でこれ以上にいい言葉はないだろう。
「はい！！」
歯切れのいい返事をし、帰路を行くふたりを敬礼で見送った。

すでに沈みかけている夕日の中、黒い長い影を伸ばし２人に姿は赤く消えていった。