【wrwrd】A firm promise【企画】 (ページ17)

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前提のことをいうようだが、２人は婚約者である。
恋愛感情を持たぬまま、縁談は決まった。
そんな中、彼女は彼に恋に落ちた。
結ばれると決まっている間柄ではあるが、好きな人に愛されたいという気持ちはもちろんある。
だが、まだ実際の結婚までは間があるし、その後の人生もまだ長い。
まだ恋愛ができる時間はある。
まだ青春が継続できるわけだ。

彼女はそんなことを脳の片隅で考えながら歩いた。
彼の家と彼女の家の間の木の下で、ふたりは立ち止まった。
そして数秒の沈黙。
沈黙に耐えかねてか、彼女が口を開いた。
「今日は・・ありがとうございました。会えて・・本当嬉しかったです。なかなかこちらから行けなくて・・本当すみませんでした」
「・・・」
彼は黙りこんで目を泳がせながら下の方を向いていたままだった。
怒らせたのかと不安になった彼女もそのまま俯いて緊張している。
また沈黙が起こり数分が経過した。
・・
「・・帰りましょうか」
「・・・あの・・」
ようやく彼女が声をかけると、彼もようやく口を開いた。

「・・俺。Aのこと・・好きなんや・・」
「・・・え」
「婚約者っていうのもあるけどそれともまた別で。・・一人の女性として・・Aが好きや」
彼は沈みかけた夕日の、その光よりも真っ赤になっていた。
「・・・私も」
彼女はぽつりとつぶやくように返す。
「同じこと、思ってました」
彼女も彼と同じくらい真っ赤だ。
彼女が恥ずかしながらに彼の顔を見ると彼は口元を抑え、目線をそらした。
そして。
「・・・抱きしめてもええかな・・？」
「・・・ぜひ」
互いの体温が伝わり、鼓動が大きく早くなる。
沈みかけ、もう半分ほどしか見えない夕日が１つになった２人の影を長く大きく映し出していた。