【wrwrd】A firm promise【企画】 (ページ13)

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osmn：上官(マミーノ) ページ13

一通りの書類に目を通し、休憩にしようとお茶を入れかけたときだった。
ある一人の見知った女性が訪ねてきた。
彼女の特徴的な、美しい、黒い長い髪は数年たった今でもふと脳裏をよぎることがある。
もちろん、恋に落ちたなどということはないが、あのときのあれほどまでに美しい涙はそれ以前にも以降にも見たことはなかった。

彼女はAさんという女性で、会ったのは２年ほど前に一度切りだったが、２年経った今でも一目見てすぐにわかった。
「トン六さん・・連絡もせず申し訳ありません。・・・今日はどうしても会わせたい人がいまして・・伺いました」
「いえ、大丈夫。仕事も一段落ついたところです」
２人分のお茶を入れ、彼女の向かい側に座る。
「ありがとうございます」
彼女はそう言ってお茶をすすった。
「それで、私に会わせたい人というのは？」
「それが大切な用があるそうで、もう少し後に来るんです。お時間は大丈夫ですか？」
「ええ、今日はちょうど大した用もありません」
「それはよかった」

久々に会った彼女は以前に見ることのなかった温かな表情をしている。
いや違う。きっとそれはただ当時は自分に見られる機会が与えられなかったというだけだ。
２年前に自分が見た彼女は、愛する人の訃報にただただ静かに大粒の涙を流していた。
亡くなった彼女の愛する人というのは自分にとっても、とても大きな人で、当時の自分はその人がいなくなったことによってできた穴の大きさにただただ呆然としていたために、彼女には何もすることはなかったのだ。
「オス田・・海軍大臣・・・」
彼女はふと私の口からこぼれた上司の名に、驚いたようだったがすぐに先ほどの温かい表情に戻り、

「オスマン君・・・」

薄目で少し冷めたお茶を眺めながら、やわらかい声で、しかしどこか熱のこもった声で呟いた。

「・・・あの・・こんなことを聞いてもいいのかわからないのですが・・」
少し考えたのち口を開くと、彼女は不思議そうにこちらを見た。
「オス田海軍大臣・・・大臣としてのあの方のことは知っています。そうではなく、あなたの知っている大臣がどんな方だったのか・・」
「聞きたいのですか？」
「ええ・・あ、よろしければでよいのです」
彼女は少し考えると、どこか楽しそうに言った。
「いいですよ。どうせなら・・初めからお聞きになってもらっても」
「では・・お聞きしたいです・が、その前に・・」
そう言って二人分の湯呑を持ち上げた。

「お茶、入れなおしますね」