Famiglia (ページ9)

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照「えっと、じゃあ早速ですけど

　渡辺さんは、どうしてあそこに？」

翔「……」

照「…ゆっくりで、大丈夫です。時間はたくさんありますから」

翔「…あの、」

照「はい」

翔「長く、なると思うんですけど、良いですか？」

照「はい、いくらでも話してもらって大丈夫です」

翔「じゃあ……

　僕は…あの人に、誘拐されたわけではありません」

照「…え？」

翔「僕は、あの人の、証拠隠滅という形で連れてこられただけです」

照「…どういう事ですか？」

翔「始まりは、9年前です」

照「き、9年前？！」

渡辺side

あの人、上松は僕の高校二年の時の担任でした

その年、先生は僕らの学校に赴任してきたんですけど、担任の経験はすでにあったので任せることは出来たんです

とても雰囲気の良い先生で、でも意外と抜けてる所もあって、時々僕は先生の手助けをしてました

翔『先生、どうしたの？』

上『あっ渡辺くん、準備室ってどこだったっけ？』

翔『えぇ？前も案内したけど俺』

上『本当にゴメン』

翔『ふふっ、まぁ良いけど。来て、今日こそはちゃんと覚えてよ？』

上『うん、分かってる』

ここまで関わった先生はあの人が初めてだったと思う

だからなのかな、学年が上がる時、初めて担任変わらなくても良いのに、って思えたの

ただ同じ学校にいるし、その辺歩いてたら会うなんてことは日常茶飯事だったので、そういう気持ちはすぐなくなりました

そんなある日のことでした

上『おっ渡辺、受験の調子はどうだ？』

翔『まぁ、なんとか』

上『○○大学目指してるんだろ？頑張れよ』

翔『うん、ありがと』

その時の僕はこの会話に何の違和感も持っていなかったけれど、今思うと物凄く不思議な会話なんです

照「えっ、どうしてですか？」

翔「受験のことを相談をしていたのは、その時の担任と両親だけです。

　あの人には一度もその大学を目指しているという話はしたことが無かったんです」

照「…その時の担任の先生が何となくで話したとか、は？」

翔「無いと思います。その先生『志望校を話すというのは個人情報をさらけ出してるのと同じだからな』って、絶対クラスの人にも話さないような方でしたから」

照「…それはそれで、また不思議な先生ですね」

翔「…とにかく、あの人が僕の進路を知る機会なんて無かったはずなんです」

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