our heart is beside you 【yuta.j】 (ページ8)

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そして、夜７時。

収録が始まった。

私たちの席はステージからまあまあ近い。

まわりを見渡せば、ファンの人だらけ。

…本当に場違いだな、私。

一応、うちわを渡されたけれど、誰のうちわなのかわからない。

「…！」

オープニングから神宮寺くんはいた。

すごいな、キラッキラの衣装着てて。

同じ高校生とは思えない。

きっと、この中にもファンはたくさんいるんだろう、
大きくて、派手なうちわがたくさん揺れていた。

「神宮寺、今日はどんな曲歌うの？」

「運命の人に向けて作られた曲なんです。先輩の曲なんですけど」

「神宮寺は、運命の人っていると思う？」

「…いたらいいですよね、まだよくわかんないですけど」

神宮寺くんの運命の人って誰なんだろう。

そんなことをステージ上で話す神宮寺くんは、まるで遠い人だ。

私なんかに気付くわけないよね、

相変わらず馬鹿だな、私は。

爪が手のひらに食いこんだ。

「A？始まったよ‼」

友達の声で神宮寺くんの曲が始まったことに気づいた。

他の人がステージを見つめる中、私だけうつむいていたみたいだ。

さすがにまずいと思って、パッと顔を上げた瞬間だった。

「！」

がっつり目が合った。

彼は本番だから激しく動揺することはなかったけど、

すぐに逸らした。

やっぱり違ったのかな。

自意識過剰すぎて恥ずかしくなった。

そのあとも何事もなく収録は進んでいった。

早く帰りたい。