任 ページ39
「はい!」
「は、はい」
体育館の隅の方に連れてこられたと思えば、
すとんとそこに座って、私にも座るように促す。
その通りにすると菅原先輩はニコニコと私を見つめる。
……どうぞ喋ってくれということだろうか。
「えっと……まず、
正セッター飛雄に譲ったのって本当ですか」
「あぁ!それなら間違いないよ」
菅原先輩は迷いなくうなずいた。
烏養コーチから聞いたのだ。
自分たち三年が多くコートにいることができるのなら飛雄を選ぶべきだと、自らそう言ったのだと。
「……愚問かもしれないですが、
なんでですか」
何故。
三年生がコートに長くいるため、勝ち上がるため、それは先輩が既に述べている通りなのはわかってる。
でもそうじゃなくて一般的に考えて。
潔子先輩だってそうだった。最後の年なのに自分のポジションを譲ろうとした。
客観的にみた理由じゃなくて、菅原先輩が 最後であるにもかかわらず譲った理由が知りたかった。
「んー.......だってさ」
「……はい」
「誰が見たって、技術的に影山の方が俺より上手いじゃん?」
ピンと指を立て、歯をみせて笑う菅原先輩。
「みんな勝つために練習してる。俺だって。
そーいうのに、最後だからとか関係ない!」
「それは……」
「それに!完全に出れないって決まったわけじゃないし!勝ち上がれば勝ち上がるほど試合に出れる確率も上がる!もう譲らない理由なんてねーべ?」
そうは言えど。
たくさん試合には出たいはずだ。そんなの聞かなくてもわかる。
けれど自分だけでなくて、しっかり周りを見て、
そういうところが試合中でも菅原先輩の強いところだ。今回の青葉城西戦でもそれをしみじみと感じた。
「……かっこいい、ですね」
「へへ、そうか?惚れてくれてもいいんだぞ〜?」
「本当に、惚れ惚れします」
先輩の目をじっと見つめた。
普通の高校生にできることじゃない。
先輩が固まっていることなど御構い無しに応援したいという一心で丁寧に先輩へのアドバイスを並べた。
「ーーと思います。私、兵庫行っても先輩のこと応援してるので、頑張ってください」
「……ありがとう」
いつのまにか夢中になって話していた。一通り話終えてパッと顔を上げると、菅原先輩は侘しげに微笑んでいた。
「……本当に、行っちゃうんだなぁ」
→
1431人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
き(プロフ) - 愛さん» ありがとうございます、!がんばります!! (2020年5月10日 1時) (レス) id: b253a946a6 (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - きさん» これからも頑張ってください! (2020年5月9日 21時) (レス) id: ebf2abea67 (このIDを非表示/違反報告)
き(プロフ) - 愛さん» わ、ほんとですか!むちゃくちゃ嬉しいです!! どうでしょうか!笑 私にもわかりません… (2020年5月9日 21時) (レス) id: b253a946a6 (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - いつも楽しみにしてます!!!あの、予想ですけど....もしかして稲荷崎のマネになるんですか? (2020年5月9日 19時) (レス) id: ebf2abea67 (このIDを非表示/違反報告)
き(プロフ) - 鏡さん» そう言っていただけると更新の励みになります…!ありがとうございます!がんばります! (2020年5月7日 22時) (レス) id: b253a946a6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きたの | 作成日時:2020年4月5日 10時