日 ページ28
いつもと同じ翔ちゃんと二人の帰り道。
いつもなら翔ちゃんがその日の練習のこととかたくさん喋ってくれるから、イヤホンなんてなくても楽しいんだけど、
今日こそいっぱい話すことありそうなのに、翔ちゃんは私の様子をちらちら伺っている。
私がさっき泣いたことを気にしているのだろう。
「あの、」
「ハイ!!」
シャキンと背筋を伸ばす翔ちゃんに、
ハイって、とくすくす笑う。
「ありがとね。気にかけてくれて」
目を合わせると弱音が飛び出そうな気がして、
けれどこんな大変な時期に、しかも今まで助けてくれた友達に迷惑をかけるわけにもいかず
空に視線を逸らした。
学校を出る前からずーっと一定の速度でなっていた、自転車のカタコトという音が急に止まった。
「なんか嫌だ」
止まったのに気づかずに少し行きすぎて、聞こえた声に振り返る。
「Aが元気ないの嫌だ」
今日大好きなバレーで、強い相手を倒した後とは思えない歪んだ表情を
自分がさせてしまったのだと分かり、チクリと胸が傷んだ。
「ごめんね……私……」
咄嗟に謝ったはいいものの、そのあとに続ける言葉がなかなか思いつかなかった。
「……家か?」
「!……えっ、と」
実は、翔ちゃんにだけまだ引越しのことを話せていなかった。
当てられるとは思ってなかったので少し言葉に詰まると、翔ちゃんは「言いたくないんならいいんだ。でも、元気だして欲しくて……」と慌てて付け足す。
「いっつも色々してもらってばっかだし、俺に出来る事だったらなんでもするから!なんかあるか?!」
「えっ、むしろ逆だよ?!してもらってばっかりなのは私のほう」
「俺なんもしてないぞ?!中学ん時からマネージャーやってもらったし、練習ついてきてもらったし、教えてもらったし、むちゃくちゃうまい菓子も作ってもらった!あとはーー」
あれだろ、これだろ、と指を折って語り出す翔ちゃん。
その顔は嬉しそうで、気恥しいけれど嬉しい、そんな気持ちになる。
翔ちゃんの言葉にはいつもお世辞なんてものは無い気がして、正直ずっと褒められていたいけれどさすがにもう恥ずかしいので「でも!」と遮った。
「翔ちゃんは、私を助けてくれたから」
「助ける……?何から?」
思い当たる節がないようで、首を傾げる翔ちゃん。
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き(プロフ) - 愛さん» ありがとうございます、!がんばります!! (2020年5月10日 1時) (レス) id: b253a946a6 (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - きさん» これからも頑張ってください! (2020年5月9日 21時) (レス) id: ebf2abea67 (このIDを非表示/違反報告)
き(プロフ) - 愛さん» わ、ほんとですか!むちゃくちゃ嬉しいです!! どうでしょうか!笑 私にもわかりません… (2020年5月9日 21時) (レス) id: b253a946a6 (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - いつも楽しみにしてます!!!あの、予想ですけど....もしかして稲荷崎のマネになるんですか? (2020年5月9日 19時) (レス) id: ebf2abea67 (このIDを非表示/違反報告)
き(プロフ) - 鏡さん» そう言っていただけると更新の励みになります…!ありがとうございます!がんばります! (2020年5月7日 22時) (レス) id: b253a946a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きたの | 作成日時:2020年4月5日 10時