A3!短編集 (ページ3)

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内緒の話【御影密】ページ3

中庭の日溜まりでスヤスヤと気持ち良さそうに眠る2人。大きな木に2人は寄り掛かり手を繋いで仲良く眠る。

「んん…」

何だか人の気配がして、ふと目が覚めた。
先に起きたのは密だった。

「…何、千景…」

「何だ、起きたのか寝太郎」

気配を消しながら近づいていた千景だったが、やはり密にはバレてしまうらしい。
どんなに寝ていても自分に気付くのが少し面白い。そんな表情が見え隠れする。

「何か用…？」

質問に答えてくれない千景に少しムッとしつつも、用件を急かす。

「別に。ここでお前が寝てるのが見えたから、コレを届けに来ただけだ」

そう言って誉から届けるよう頼まれたマシュマロを差し出す。密は「…そう」たった一言だけ言うと、奪うようにして受け取った。

それでもまだ立ち去ろうとしない千景に疑問を持ち不思議そうな顔で見ると、ふっと鼻で笑われた。

「まだ何か用？」

「いや？ただ、昔を思い出して、その子と寄り添ってるのが何だか不思議だと思っただけだ。」

「ふーん…？Aは渡さない」

「いらん」

「Aはオレの…とても大切な人、だから」

「そうか。なら大切にするんだな」

「当たり前。千景にも出来ると…良…ぐー」

「最後までちゃんと言え。全く…で？Aはいつまで寝たフリをするつもりなんだ？」

まるで貼り付けたような笑顔を向けられ、見えてはいないのに蛇に睨まれた感覚に陥った。

恐る恐る目を開けると、表情は変えずに向けられた視線とかち合う。

「バレてましたか…」

あはは…と苦笑いを零しながら、密が起きないように小声で言った。

「でも、お陰で良い話が聞けました」

「Aにとって、はな。俺はただ惚気られただけで何の得もない」

笑顔が崩れ、呆れたようにため息を吐く千景に、何かすいませんと軽く謝る。

「コイツがこんなに人に懐いてるのを見るのは久しぶりだ。だからこその心配もしている」

「千景さんがどんな心配をしているのかは知りませんけど、大丈夫ですよ安心してください」

簡単に言った訳ではない、確信を持って大丈夫だと言い切ったその目の真剣さに負け、千景はふっと笑う。

「俺が言ったこと、コイツには言うなよ」

「分かりました、2人だけの秘密ですね」

そう言うと黙って立ち去る千景の背中を見送り
隣でスヤスヤと眠る密の頭に軽く口付け
自身もまた、夢の中へと落ちていった。

陽の光が二人を照らし
キラキラと暖かな空気を纏っていて
何だか別次元の様だったと、誰かが語った。