黒い帽子 ページ30
Aside
見てしまった。
見てはいけないことだった。
動悸がおさまらない。
大学の大通りを挟んだ向こう側でコンビニによった帰り道。
コンビニから出でると、３車線の向こう側に
神山くんともう一人
黒い帽子を深くかぶった女の子が二人
大学を出て、歩いている様子。
女の子は神山くんに腕を絡めて歩いていた。
短パンで、帽子かぶって
スタイリッシュな服を着ている。
…神山くん、本当はそういうタイプの人が好きなのかな。
神山くんは器用だもん。
浮気しているなんて、そんなそぶり、全く分からなかった。
息が荒くなる。
神山くんが私の視界から
女の子とともに消えていく。
行かないで、神山くん。
でも、私が問い詰めることのできる分際じゃない。
私よりも神山くんの彼女に適している人なんて
ごまんといる。
神山くん。
どこ行くの
中間「…A？」
神山くんが角を曲がって
完全に私の前からいなくなった時
後ろを振り向くと、心配した淳太くんがいた。
「あ、淳太くん…。
外回り？」
中間「うん。営業は大変やな。
Aはコンビニ帰り？」
「あ、うん。」
そう言うと、淳太くんは優しい笑顔を向けて
中間「ちょうど昼ご飯やね。
どっか寄らん？」
そう言ってくれた。
だけど、ごめんね淳太くん。
今それどころじゃないんだ。
「ごめん、ちょっと疲れてて。
早く家に帰ろうかなと思ってたところなんだ。」
中間「そっか。
なんか、浮かない顔してたから、美味しいもんでもと思ったけど。
昼寝やな、さては。
昔からAは昼寝好きやったもんなぁ。」
そう笑いながら私の頭を撫でる淳太くん。
中間「あまり思い詰めんなよ」
「え？」
中間「何があったかは知らんけど
元気なさそうやったから心配。
寝たら何もかも忘れるとええな」
じゃあ。
そう言って、淳太くんは駆け足で次の現場へと向かった。
…他の人からもわかるような
私、そんなに思い詰めた顔してたかな。
やっぱり
私は神山くんがいないと何もできない。
でも、神山くんは、私がいなくても
大学ライフを楽しめるよね。そんなの当たり前だ。
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作者名：きい
| 作成日時：2021年3月28日 0時
