金箔の味、冬（過去） ページ6
高校卒業して、初めての旅行。
高校三年生の時は、Aが大学受験だったために、旅行することなく
会うのは福岡の旅行以来やった。
今年の冬は金沢に旅行するということで、俺だけ仕事で遅れて合流した。
金沢駅に着くと、レンタカー二台が見えた。
母親と父親の乗っている車に乗ると、なぜかそこにはAがいた。
重岡「あれ？Aあっちの車ちゃうん」
助手席に座っているオカンが、俺を睨む。
母「久しぶりに会ってその言い方はなんやねん」
重岡「え？あ、ごめん。久しぶり」
「久しぶり」
Aは大学デビューして、メイクで尚更綺麗になった。
元から綺麗やったけど。
母「Aちゃんとお話しするの久しぶりやったから連れて来ちゃった笑」
重岡「そうなん」
Aのオカンとオトン可哀想やなって思ったけど、俺的には好都合やったし
後部座席で2人並んで座ることにした。
「お仕事お疲れ。忙しい時にごめんね」
重岡「ありがとう。全然忙しくないから大丈夫」
母「まだ、ジュニアやもんな」
うるさいな、入ってくんな。
おかんをちょびっと睨むと、隣でAの笑う声が聞こえた。
重岡「なに？」
「ううん」
Aの笑顔が見れて、少しほっこりする。
２年前のAは高校生活全然楽しくないって言ってたから。
大学生活は楽しめてるのかな
そんな気がした。
少し車を走らせると、オカンが叫んだ。
母「あ、近江町市場にな、金箔ソフトがあるらしいねん。
大毅、行ってきてくれへん？」
重岡「なんでやねん、おかんが行けや」
近江町市場の入り口で車が止まり、ハザードランプが点滅する。
「私が行きましょうか？」
母「ホンマ？おおきに〜。
じゃあこれでお願い。余ったらお駄賃としてあげるから」
お金を受け取ったAは礼をして車から降りた。
母「あんたも行けや」
静かな車内でおかんがボソッと言う。
重岡「え？」
母「Aちゃん1人で行かせんの申し訳ないやんか！万が一のことがあったらどうすんの。
あんたたち2人の分も買ってきてええから。ほら」
俺にお金を握らせるオカン。
しゃあないな。
そう思いながら車を降りた。
でも内心は、
2人きりや。
おかんサンキュー。
心はルンルン気分やった。
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作者名：きい
| 作成日時：2021年1月8日 0時
