[4]小瀧望、無期限の芸能活動休止します (ページ8)

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インターホンを押した。でも、誰も出てこなかった。

２階の窓を見ると、Aの部屋のあかりはついていた。

俺はゆっくりとAの家の玄関のドアを開けた。

鍵はかかってなかった。危ないな。

ドアをゆっくり閉めて鍵をちゃんとかける。

何度も通ったことのある道やけど、今日はAの部屋までの道のりが長く感じた。

俺がAの部屋の扉を開けると、Aはベッドお布団にくるまって泣いていた。

俺に背中を向けていて顔はよく見えない。

息の荒い声が聞こえる。

勉強机の上にはさっきまで教室の机に置いてあった補聴器が置かれていた。

「A…。ごめんな。」

俺がベッドに腰掛けると、その重みでびっくりしてこっちを向いた。

「一人がいいって言ったじゃない…。」

そう言いながら起き上がり、ちょこんと俺の隣に座った。

俺はAのことを抱きしめた。

「…智洋くん。」

精一杯、この温もりで俺の気持ちを伝えたかった。

一人で抱え込んでいたAは、俺を助けるという選択肢は頭の中になかったんや。

「私のこと嫌いになった？」

そう聞くA。

俺はAのことをちゃんと目を見て首を振った。

そんなわけないやんか。

「なんでそんなこと思うん。」

そう言っても、Aは俯いたままこっちを向いてくれへん。

Aは立ち上がり、机の上の補聴器を持って戻った。

「伝えてなかったことがある。」

そう言って、補聴器を俺に見せた。

「私は、車の音とか電車の音とか、大きい音は聞こえるけど、

会話の声はもう聞こえないの。

だからね、智洋くんの声も…。こうしないと聞こえない。」

補聴器をつけた。Aはこの補聴器に顔を歪める。