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それからあっという間に一年が過ぎていった。
ライブももうすぐ終わりを迎える。
大勢のスタッフと一緒に回るライブツアー。
Aさんは当日にやることはないのでオーラスだけ観に行くとのこと。
今日がそのオーラスやった。
「小瀧。神山。ちょっと。」
二人呼ばれてチーフマネージャーのいる部屋へ入ると、険悪なムードが漂っていた。
何があったのか神ちゃんに目配せしても、神ちゃんも何もわからんと言った状況やった。
「この話が明日の週刊誌に出る。」
チーフマネが机に広げる週刊誌の記事を覗き込むと、そこには俺の熱愛記事が出ていた。
相手はAさん。
いや、俺の熱愛記事というよりかは、Aさんの熱愛記事といった方が合っているのかもしれない。
「記事にはこう書いてある。
神山と幼馴染の楓さんが神山と付き合っているにも関わらず小瀧とのドライブを楽しんでいると。」
「あのっ、これは…。」
「とりあえず、楓さんには今日来ないでほしいと連絡しといたから。
スタッフには俺から謝っとく。」
わかったな？と、有無を言わせないマネの目は怖かった。
「写真まで出ている。ほら見ろ。」
コンビニの前の駐車場で俺がAさんに告白した時の、車の正面からの写真。
どう見ても俺とAさんで。
俺がAさんにキスしている写真と、
二人で見つめ合って嬉しそうに微笑んでいる写真。
迂闊やった。目の前に止まっていた車が記者やったなんて。
「これは、スタッフの誰かがリークしたとしか思えない話だ。」
蛍光ペンで強調されている文章には、
ライブの会議が終了した後に、神ちゃんがAさんを連れて二人で応接間に入って喋っていたという話やった。
“二人の空気は他と違ってお互いがお互いを想いあっているような、誰にも邪魔できない空間がそこにはありました。”
「連日、問い合わせがある。わかってるだろうけど……。」
もう、会うなってことか。
「あの、Aさんの…。あ、楓さんの体調は？」
この記事はAさんのイメージをダウンさせてしまうもの。
浮気ではないのに、あたかもAさんが浮気しているような都合良い文章が流暢に書かれている。
「今は家でおとなしくしている。…まさかとは思うけど。小瀧」
「はい」
「俺の勘だけど。楓さんと付き合ってるのは神山じゃなくて、お前だな？」
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作者名：きい
| 作成日時：2021年10月17日 19時
