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「…俺はAの助けてに応えることができひんかった。」
神ちゃんが全てを話し終えて、
俺は神ちゃんの歪んだ顔を見つめた。
「俺は本気でAを幸せにしたかったし、Aと一緒におりたいって思った。
でもその言葉が全部無責任になった途端に、
Aは俺を信じることができなくなってしまったんや。」
Aさんの高校時代は確かに辛かったとは思う。
今まで元気で明るく振る舞っていた人が急に病気を抱えてしかもそれが、
大事な五感の一つを失ってしまったら。
意思疎通をうまくできていた頃を知っているからこそのお互いのすれ違い。
「まさかAが父島におるとは知らんかった。
それに…。のんちゃんと出会ったのも奇跡やな。」
神ちゃんが温かいココアをくれた。
「あの時のことを謝りたい。
自分の仕事に夢中になってAと全然会わない日々が続いたのも事実やし…。」
「それは、Aさんも心に蟠りができているままやと思う。」
「うん。コンサートの会議が終わった後にでも話す。」
「仲直りできたらええな。」
「のんちゃん。」
神ちゃんが俺の方を向いて、ありがとうと呟いた。
「のんちゃんがおらんかったら俺はAを見つけることができひんかったかもしれん。
それに……。
俺やったらAのことを本土に連れて帰ることはできひんかったかもしれへん。
のんちゃんやからできたこと。
それだけ、のんちゃんはAに信頼されてるんやな。」
そう言う神ちゃんは、少し寂しそうに笑った。
俺も、元カレの神ちゃんにどんな言葉をかけていいのか分からんかった。
正直、神ちゃんの気持ちもわかるから。
それでも、Aさんが一歩ずつでも前に進んでいけるのなら俺は協力したいと思う。
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作者名:きい | 作成日時:2021年10月17日 19時