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鉛筆を静かに置いたところで、俺はAさんを後ろから抱きしめた。
「え……サヤカさん…？
………望くん？」
Aさんがこっちを振り向いて俺が微笑むと、
Aさんは嬉しそうな顔を一瞬見せた。
「ごめんね。」
その言葉で全てを読み取った。
きっとAさんは、俺の熱愛報道で俺に迷惑をかけてしまったって思ってる。
「やっぱり、私は島にいた方がよかった。
望くんの気持ちは嬉しいけど……。
望くん、ここまで来てくれてありがとう。私…」
“Aさん。”
次に言われる言葉が怖くて、俺は遮ってしまった。
俺はAさんに謝ってほしくてここに来たんとちゃう。
“俺の方こそごめん。”
俺が言うと、Aさんは不思議そうな顔をして俺の方を見た。
“Aさんにこれ以上辛い思いをさせたないのに、
Aさんが島に帰るくらいAさんを追い込んでしまって。
でも俺、Aさんおらんと生きていけん。
それに、俺やっぱりAさんが大好きやねん。
Aさんの笑った姿を見るのが1番好き。だから”
「望くん……。」
“Aさんが言いたいことと逆やで。”
「え？」
“俺が言いたいのは…”
俺はAさんの前に正座で座り直して手と口を同時に動かした。
“結婚してください”
はっきり、ゆっくり、Aさんに伝えると、
Aさんは幻を見たようにその場で瞬きを何回もしていた。
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作者名：きい
| 作成日時：2021年10月17日 19時
