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家の扉を開けると、その音でサヤカさんが迎えてくれた。



楓は俺の胸で気持ちよく眠っている。



「おかえり、のんすけ。」


「ただいま。あのお二人は?」


「しばらくは宿に泊まるって出てったよ。


3日したら本土に帰るって。」










Aさんに与えられた猶予は3日間。





きっと親御さんは楓を連れて帰ることしか考えてへんやろう。









俺が楓と神社で喋っているとき、Aさんは、2人と何を話したんやろうか。













「楓、サヤカさんの家に今日は泊まりたいって言ってまして。」



「あら、そう?……そうよね。じゃあ」






俺は楓をサヤカさんに預けた。








「あの…状況を教えてください。」






「……Aに寄り添ってあげて。



あの子、不安定だから。」






おやすみ






そう言ってサヤカさんは隣の家の中へ入っていった。
















俺が中に入ると、Aさんは夕飯の支度をしていた。









Aさんの肩を叩くと、Aさんは俺の方を向いておかえりと呟いた。




それだけで、俺から目を離す。








何も言わないこの静寂の時間が、今日はやけに辛かった。









肩をトントンと叩いても、



いつもなら振り向いてくれるのに料理中だからと、






俺の話に耳を、目を傾けてくれへん。

















俺はAさんの様子を見守りながら、シンクに溜まっている洗い物に手をつける。

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作者名:きい | 作成日時:2021年9月8日 22時

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