心の声を聴きたくて (ページ23)

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＊重岡ページ23

あの時

Aが全部話してくれた。

母親の誕生日に父親が自動車事故で亡くなったこと。

それを機に、母親がうつ病になって

父親のあとを追うように亡くなった。

葬儀は2人一緒に行い、

手続きは全て俺のオカンが担当した。

Aはやっぱりまだ立ち直れてない様子で。

重岡「おはよう。」

「うん。おはよう。」

俺の挨拶にも静かに答える。

Aは、しばらくは俺の家で預かることになった。

俺のオカンが

高校生活を一人暮らしは大変やし、

まだ傷が癒えてないAをひとりにするのは心配やっていう理由。

俺の姉ちゃんが大学に入学すると同時に東京に引っ越したから

部屋もちょうど空いていた。

　

重岡母『Aちゃん、おはよう。

よく眠れた？』

『おはようございます。

まあまあ、寝れました。』

重岡「あれ、うそやろ？」

「え？」

重岡「いや。」

俺の部屋の隣で、Aが鼻を啜っていて

気になって気になって

心配で心配で

俺、全然眠れへんかった。

神ちゃんの家のインターホンを押すと、

神ちゃんが玄関のドアを開けてびっくりする。

神山「え？なんで早いん？」

重岡「へへ。俺も早起きできるんやで！！！」

神山「ちょっと待ってて。」

神ちゃんが慌ててる。

神ちゃんが自分の家に戻り、俺はAの方を向いてニヤッと笑った。

重岡「慌ててる神ちゃん、かわええな？」

「え？かわいい？

まあ、ともくんはいつもかわいいけど

大毅が言うとなんか怪しさ満点だな。」

重岡「え？あ、いや、そういうんちゃうから！！！やめろや。」

「ふふ。」

あ、

久しぶりにAが笑った気がする。

重岡「みんな、Aの味方。」

「…うん。」

重岡「Aがいいって思ったらでええから

部活も毎日来てほしい。」

「…行くよ。

お母さんのためにも、ちゃんと県大会で結果残さなきゃ。」

重岡「お、その意気や！」

Aも、前向きになってくれている。

普段のAに戻るまで、そう時間は掛からへん。

そう確信した時、神ちゃんがちょうど

神山「お待たせ。」

やってきて、

いつも通り、Aを真ん中に

3人並んで駅に向かう。

日常

それが続くことの幸せを噛み締める。