心の声を聴きたくて (ページ17)

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Aside

はあ。

鹿島病院の広場にあるベンチに座って、今朝作って残りのスポーツドリンクを喉に流し込む。

お父さんが亡くなってから、お母さんの様子がかなり変わった。

本当は通夜も葬儀もする予定だったんだけど、

お母さんの精神が不安定すぎて、やっていられる場合じゃなかった。

お父さんの体は火葬して

今はお墓に眠っているけど

お母さんは、お父さんを失った悲しみに明け暮れて

字の通り、おかしくなった。

私はいつ死んだらいいか

どこで死んだらいいか

お父さんの元で何をしようか

そんなことを言う毎日だった。

料理も焦げてばっかり

洗濯物も生乾きのまま棚にしまう。

私はとても部活をやってられる場合じゃなかった。

でも、早く帰って来るとそれはそれで怒られる。

部活をちゃんとやってなかったらお父さんが怒るわよ、とか。

でも、遅く帰って来ると、お母さんが家のブレーカーを落としてお父さんと同じ空気を吸ってるとか

わけ分かんないこと言う。

だから、早めに早退して

お母さんの様子を見るしかなかった。

ともくんと大毅には悟られないように、明るく振る舞った。

迷惑かけちゃダメだから。

きっと、お母さんも自分のこんな姿見られたくないと思う。

ある日、家に帰ると

お母さんが坊主にしていた。

お母さんに聞くと

自分の髪の毛の中に虫が入ったらこの家に迷惑かけちゃうから

だから髪の毛を切ったと言う。

限界。

限界だった。

私はお母さんと一緒に精神病院に行った。

　

　

診断の結果、うつ病。

そのままお母さんは入院することになった。

だけど、心配で。

私は病院に通ってお母さんの様子を毎日見に来た。

　

　

お母さんの心はいつも沈んでいた。

お金がないから無銭飲食したいとか

迷惑かけないで死ぬなら

山の奥に行けばいいとか

聞くたびに、自分も沈んだ空気に飲み込まれそうになる。

お母さんを明るいところへ連れ出さないと。

毎日が必死。

ベンチで一息ついたら、

家に帰ろう。

そう思って、水筒をバッグにしまおうとしたら

重岡「…A。」

大毅とともくんが、なぜかいた。

どうして？