気が付いたら2【佐野万次郎】

狙われる理由 ページ22

少々強引に友達宣言された後の事。

「手短に終わらすからさ、今日も部活終わったら顔貸してくんない？」


部活が始まる前に深山さんから言われて、私は昇降口を目指しながら彼女と話をする。


「兄貴が入ってるチームの事なんだけどさ……」

「愛美愛主…だよね？」

どこか言い難そうに話し出す彼女に尋ねると「うん」と答えて、それからポツポツと話してくれた。


彼女は始業式から数日後に謹慎になった為、最近まで学校には来ておらず、少し前までの学校の様子はよく分かっていなかったようだ。


謹慎が始まって数日が経った頃、「ずっと家にいるのもつまんねぇだろ？」とお兄さんに連れられて愛美愛主の集会へ着いて行ったらしい。

そこでチームに入ったばかりの新入り二人が“生意気な女に恥をかかされた”と言う話題が集会で上がったと言う。


金を巻き上げようとしたら口答えされた挙げ句、東卍のマイキーとドラケンが現れて逃げ帰ったと。

新入りの二人はそこで何発か殴られたらしい。

愛美愛主の一員なら、おめおめと逃げ帰るなと言うことだったようだ。


「そこからだよ、奴らがアンタを探し始めたのは」

昇降口の前まで来ると深山さんが立ち止まった。


「アタシも最初はそれがAの事だとは知らなかったんだ。…でも、二人組がウチの着てる制服と同じヤツだったて言うから、そこでまず学校がバレたワケ」

「な、なるほど…」

それで彼らは学校の回りを彷徨くようになったらしい。


けれど、愛美愛主も最初はそこまで本気で私の事を探していたわけではないと言う。

女に恥をかかされたことも総長の長内にとっては耐えられなかったようだが、それよりもマイキーくんとドラケンくんたちから逃げ帰ったことの方が問題だった。


年下の中学生チーム相手に高校生のチームである愛美愛主が喧嘩もせず逃げ帰った。

新入りとはいえ、それは愛美愛主の看板に泥を塗る行為に等しかったと言うわけである。


「だから、東京卍會のメンバーに絡んでたってこと？」

「知ってんの？」

「うん。少しだけ三ツ谷くんから聞いた」


言うと「そうだよ」と返事が返ってくる。


「喧嘩吹っ掛けて、そのついでにアンタのこと聞き回ってたらしい。でも、誰も口を割らない」


それはそうだろう。

だって、私のことはマイキーくんとドラケンくんしか知らなかったのだから。


「そんなある日、愛美愛主は東卍の集会に乗り込んだ」


聞いてピント来た。

そこからは私も知っている話だ。

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