エピローグ2/6 ページ43
「忘れてた。
そういえば…、返すそうだ。
見舞い代わりかもな。」
降谷は、スーツの内ポケットから一冊の通帳を取り出しAに手渡す。
見覚えのありすぎる通帳。
死んでいた筈の人間に、当たり前の様に返す、と言ってのけた男を思い浮かべ、あの人もはや人間の生死すら操る事が出来るのでは?とAは慄く。
予想はつくが、一応通帳を開く。
やはり最後の入金から、数字は何一つ変わっていなかった。
同じ様に通帳へ目線を落とした降谷は、あまりの桁に開いた口が塞がらなかった。
(これ、何桁だ…)
「お見舞い代わり…
メロンいくつ買えるかな。」
「……」
降谷は、Aのズレた発想に信じられないといった目を向ける。
「え?」
「…いや、何でもない…。」
「…ふふっ…、冗談だよ。
全部寄付します。」
「…そうしてくれ。」
「あっ‼でも3つだけ…」
思いの外、Aはすぐにいつものペースを取り戻している様に見えた。
数年間離れていたものの、やはり変わらないAの纏う雰囲気が余りに心地良くて、降谷の口元は緩んだ。
(今なら、何でも買ってやりそうだな俺…)
「まずは林檎買って、あの時のゼリー零に作って貰う。」
普通ならばそんな事?と思うが、林檎のアレルギーを持つAにとってそれは死活問題な筈。
考えにふけり黙る降谷を置いて、Aは続ける。
「美味しそうだったのもあるけど…あのゼリー食べられなかったの悔しかった。」
「悔しかった…?」
「あの時の零すっごいドヤ顔だった。」
Aの口がへの字に曲がる。
そんな表情すら、今の降谷には愛おしい。
「お安い御用ですよ。」
「…‼」
「なんて、言うと思ったか?」
にこやかな笑みは一瞬で消え、降谷はジロリとした視線をAに向ける。
「突然の安室透、よくない。」
気持ちの緩んでいる今、不覚にもドキっとしたとした事を降谷には悟られたくない。
「じゃあ、せめてハムサンド…」
「お安い御用ですよ。」
「だから突然の安室さんは止めて下さい。」
「…ははっ…」
降谷は心から笑っていた。
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虎鉄(プロフ) - まみこさん» まみこ様、私こそ深夜にすみません!こちらにまで涙。一気読み+コメントする時間まで割いて下さり本当に有難うございます!松田氏なりに降谷氏とは違う道を進むのでお付き合い下されば嬉しいです。大切に書いた話なのでそう言って頂けて感無量です。 (2022年7月24日 0時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - 応援してます!!本当にこの作品は神です!! (2022年7月16日 1時) (レス) id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - こんばんは!!真夜中にすみません💦一気読みしました!マジで感動しました!!あー、夢主ちゃん良かったね!!と、保護者のような気持ちで読んでましたねw松田さんのほうも読んでます、頑張ってくださいね!! (2022年7月16日 1時) (レス) id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(消えた捜査官松田ver作成中)(プロフ) - ひゆめさん» ひゆめ様、一気読みのお時間頂戴しまして……!かつコメントまで下さり本当に有難う御座います。クロサギ懐かしいですよね(^^)当時は全く意味分からんまま見てましたが笑。読んで下さってありがとうございました(^^)!2と合わせての返信で失礼します。 (2022年6月12日 10時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
ひゆめ(プロフ) - 同じく一気読みしました!!クロサギ懐かしいと思いながら進めていたら凄く惹き込まれました。とても面白かったです。 (2022年6月12日 0時) (レス) @page50 id: 141a54d8d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年6月2日 0時