【名探偵コナン】消えた捜査官5【降谷零】

196 ページ38

「司法は万人に平等…それがこの国の法律であり、この国を支えている。
だから、俺達はこの国を変える事にした。
…正確には、この国の司法だ。」


差し出された資料には存在感のある英単語が記されていた。

【Plea bargaining】

「……司法取引」



司法取引とは、海外の捜査でも広く使われている捜査手段の一つである。
証言や証拠の提出により他の犯罪を明らかにする事で、自らの刑事罰を免除又は軽減してもらう「捜査・公判協力型」と言われるシステムだ。
特にアメリカでは広く知れ渡っており、FBIが事件解決や交渉術において最も得意とする手段である。



「俺も動き出すまで知らなかったが…この日本でも、実は水面下で司法取引の法整備が進められていた。
最後は随分強引に進めた部分もあったが、上は笑み一つで目を瞑ってくれたよ。
そしてやっと…この日を迎える事が出来た。」

「……」

「Aが、その知識と頭脳を、その信念を、そしてこれからの時間を、警察官としてこの日本の為に尽力すると約束してくれるならば。」

「……っ…‼」

「この国と日本警察を守ろうとした勇気ある仲間を、見捨てたりはしない。
我々日本警察は、手放しで歓迎する。
…綾瀬A特別捜査官として。」

「………っ…っ‼」

ベッドのシーツを握りしめて静かに涙を流すAへ、降谷はもう一歩近付いた。
そしてベッドの脇にしゃがみ込み、降谷は俯いて泣くAを見上げる形となった。

「未だに一部の非難の声もある。
これから辛く過酷な道も待っているかもしれない。
けど…一緒に歩もう。」


大きな手が、震える小さな手を包み込む。


もう、何も諦めなくていい。

だから

俺と生きる事を諦めないでくれ。



「今度は、俺が守るから。」

197 -第9章 終- END.→←195

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す