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その後、Aは日々の検査に追われた。
あれ以来、警護の人間が交代に現れる位で降谷が病室に顔を出す事はなかった。

この病室には、TVがない。
手元には携帯も何もない為、Aには外の情報を得る手段が何一つとしてなかった。
これからいくであろう刑務所よりも不自由とも言えるこの空間に、Aは心の中で苦笑いを隠せない。

Aの処遇について何の言及もないまま、遂にAの退院の日が決まった。





ー退院の日ー

あと数時間後には退院となる。
この病室を出た後、自身はどこへ向かうのだろうとぼんやり窓の外を眺める。

ガチャリと、病室のドアが開く。
最後にあの無愛想な外科医でも来たのだろうか、そう思いながら視線をドアに向けたAは目を瞬かせた。

「れ…、降谷…。」

「遅くなった。」

Aは、遂にこの時が来てしまったと心の中で溜息をついた。

(一番辛い役割を、背負わせちゃったな…)

降谷に、Aの未来が委ねられた。






ベッドの側に来た降谷は、Aに分厚い紙の束を差し出した。
パラパラと捲ると、そこには沢山の人間の氏名が所狭しと記されていた。

「……これは…?」

Aは困惑を隠せない。

「Aの減刑を求める嘆願書だ。」

「嘆願書…」

「それを先導したのは、Aが今まで関わってきた詐欺被害者達だ。」

「…っ‼」

「これは、お前の正義の証だ。」


『だから、やる。
お前の正義の証だ。』


Aの脳裏に、数え切れないほどの人々の顔が浮かぶ。
彼らは、何の罪もない一般市民だ。
それに引き換え、自分はテロリストと揶揄されても仕方のない犯罪者だ。
一歩間違えなくとも、テロリストと紙一重だという自覚はある。
そんな自分の為に、彼らは立ち上がってくれたというのか。

Aはまさかの出来事に声が出ない。

「けど、減刑じゃ意味がない。
俺は、いや、日本警察はお前を犯罪者というカテゴリーだけでは括りたくない。」

あの降谷が、出来もしない理想を語るのは珍しいなとAは思った。

「司法は万人に平等…それがこの国の法律であり、この国を支えている。」

「……」

「だから、俺達はこの国を変える事にした。」

「え?」

「正確には、この国の司法だ。」

そう言うと降谷は、Aの持つ分厚い冊子の下から、薄い冊子を抜き出した。
差し出された資料には、日本では見かける事の少なかった単語が大きく記されていた。

【Plea bargaining】

「……司法、取引」

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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:アニメ
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虎鉄(プロフ) - まみこさん» まみこ様、私こそ深夜にすみません!こちらにまで涙。一気読み+コメントする時間まで割いて下さり本当に有難うございます!松田氏なりに降谷氏とは違う道を進むのでお付き合い下されば嬉しいです。大切に書いた話なのでそう言って頂けて感無量です。 (2022年7月24日 0時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - 応援してます!!本当にこの作品は神です!! (2022年7月16日 1時) (レス) id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - こんばんは!!真夜中にすみません💦一気読みしました!マジで感動しました!!あー、夢主ちゃん良かったね!!と、保護者のような気持ちで読んでましたねw松田さんのほうも読んでます、頑張ってくださいね!! (2022年7月16日 1時) (レス) id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(消えた捜査官松田ver作成中)(プロフ) - ひゆめさん» ひゆめ様、一気読みのお時間頂戴しまして……!かつコメントまで下さり本当に有難う御座います。クロサギ懐かしいですよね(^^)当時は全く意味分からんまま見てましたが笑。読んで下さってありがとうございました(^^)!2と合わせての返信で失礼します。 (2022年6月12日 10時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
ひゆめ(プロフ) - 同じく一気読みしました!!クロサギ懐かしいと思いながら進めていたら凄く惹き込まれました。とても面白かったです。 (2022年6月12日 0時) (レス) @page50 id: 141a54d8d9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年6月2日 0時

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