【名探偵コナン】消えた捜査官5【降谷零】

186 ページ28

ワイドニュースは連日、こぞって今後の展開をあれやこれやと予測し続けている。

あれから降谷は毎日病院に通い続けた。
もちろん仕事は待ってくれない。
面会時間内に訪れる事はほとんど出来なかった。
それでも降谷は必死に病院に頭を下げ、特例という形で毎日の面会の許しを得た。
時にはたった数分の為に、車を走らせ続けた。

この病室と同じ様に、状況も何も変わらなかった。

「俺は…たった一人も救う事は出来ないのか。」

正直言って、手詰まりだった。






ある日の事だった。

あの潜入捜査の功績を経て、晴れて昇進を果たした降谷のデスクは２つある。
今まで通り、率いる部下と肩を並べるデスクと、降谷1人に用意された個室にあるデスクだ。
その日降谷は、自身の個室でFBIから提出された書類を読み込んでいた。

ドアの奥が何やらバタバタと騒がしい。
その足音は、どんどん降谷の居る部屋へと近付いてくる。

訝しげな視線をドアに向けた時、そのドアはノックされた後、降谷の返事を待たずして開けられた。

「おい…一体何の騒ぎだ？」

全速力で駆けてきたのだろう風見が、肩で息をしている。

「ふ、降谷さん…っ‼」

「なんだ」

「ちょっと…来て、下さい…っ」

「まず落ち着け風見」

「テレビ…TV…っ」

「…TV？」

風見は息を落ち着けた後、一息で要件を告げた。

「降谷さん！今すぐテレビを見てください！
いいから早く着いてきて下さい！」

当たり前だが職務怠慢の観点から個室にはTVは置かれていない。
あるとすれば、一番近くて、もう１つの降谷のデスクがある部屋だった。

あまりの風見の勢いに押され、降谷は読んでいた書類を手に持ったまま、風見に先導されTVを目指す。
TVを付けろ、この指示で否が応でもあの時の忌まわしい記憶が呼び起こされる。

(まさか…、Aの身に何かあったんじゃ…っ‼)

嫌な胸騒ぎに、降谷の表情がどんどんと強張っていく。
やがて、大勢の捜査員が取り囲むTVの前に誘導される。
降谷に気付いた部下たちは、降谷のために道を開けた。

「一体…これは…っ」

187→←185

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す