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降谷には、半年前のあの日、コナンに言えなかった事がある。
残酷なまでに司法は平等だ。
『安室くん、彼女が目を覚ましたとして…その先はどうなる。』
『……。』
『彼女の功績はこの国にとって計り知れないものだっただろう。
彼女は人を殺めてはいない。
だが、だからといって彼女が犯した罪は消えない。
…だろう?』
赤井は、降谷が今まで直視するのを避けていた問題をまざまざと突きつける。
そう、不思議な感覚の原因はそこだった。
降谷とて、Aに目を覚まして欲しくない訳ではない。
目覚めない今は、こうして側にいる事が出来る。
しかし、Aが目覚めたとしたら。
この国で生きる以上、今までAが犯してきた罪からは逃れる事は出来ないだろう。
彼女はいずれ、罪人として裁かれる。
皮肉にも、命を懸けて守ったこの国に。
それに、死ぬ事になったとしても警察官としての信念を曲げなかったAの事だ。
この国で罪を逃れる為に隠れて生きていく事が出来たとしても、彼女が自分自身を許す事はないだろうし、そもそもその道を選ぶ訳がない事を降谷は知っている。
「彼女の生存を知っているのは、俺と安室くん、そして極一部の人間だけだ。
…彼女を、犯罪者としての道を歩ませない方法が1つだけある。」
「……。」
「…本国に渡り、証人保護プログラムを受ける事だ。」
それらが意味するものは1つだけ。
どの道、降谷とAの未来が交差する事はない、という事実だ。
Aが目覚めるという事は
同時に降谷とAの別離を意味する。
降谷は、Aの指先にそっと触れた。
その温もりに触れた瞬間、長期に渡った潜入捜査が終わったのだという実感が込み上げる。
かけがえの無い友も、安室透ももう居ない。
全て、終わったのだ。
触れるだけのつもりだった筈なのに。
降谷は、その手を両手できつく握り締めると己の額に押し当てた。
言葉に出来ない様々な感情が押し寄せる。
もう一度、Aと生きたい。
名前を呼んで欲しい。
澄んだその瞳に、自分を映してほしい。
もう二度と離れたくない。
矛盾する願いは、涙となって消えた。
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虎鉄(プロフ) - まみこさん» まみこ様、私こそ深夜にすみません!こちらにまで涙。一気読み+コメントする時間まで割いて下さり本当に有難うございます!松田氏なりに降谷氏とは違う道を進むのでお付き合い下されば嬉しいです。大切に書いた話なのでそう言って頂けて感無量です。 (2022年7月24日 0時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - 応援してます!!本当にこの作品は神です!! (2022年7月16日 1時) (レス) id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - こんばんは!!真夜中にすみません💦一気読みしました!マジで感動しました!!あー、夢主ちゃん良かったね!!と、保護者のような気持ちで読んでましたねw松田さんのほうも読んでます、頑張ってくださいね!! (2022年7月16日 1時) (レス) id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(消えた捜査官松田ver作成中)(プロフ) - ひゆめさん» ひゆめ様、一気読みのお時間頂戴しまして……!かつコメントまで下さり本当に有難う御座います。クロサギ懐かしいですよね(^^)当時は全く意味分からんまま見てましたが笑。読んで下さってありがとうございました(^^)!2と合わせての返信で失礼します。 (2022年6月12日 10時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
ひゆめ(プロフ) - 同じく一気読みしました!!クロサギ懐かしいと思いながら進めていたら凄く惹き込まれました。とても面白かったです。 (2022年6月12日 0時) (レス) @page50 id: 141a54d8d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年6月2日 0時