【名探偵コナン】消えた捜査官3【降谷零】

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Aは灰原の言葉が聞こえていないかの様に、何も答えなかった。
灰原は思い起こす。

(確か前、江戸川君が連れてきた時…彼女は左利きと言っていた…)

Aの左腕は、ダラリと下げられたまま指先はピクリとも動く事はない。

(でも、さっきは迷わず右手で拳銃の引き金を引いた…)

「もしかして、あの時私を庇って…」






「探偵団諸君！私は君たちを侮っていたよ、ちゃーんと私の言う事を守ってくれたね。
ありがとう。」

いち早くゴンドラ内に降り立った、Aは右手で歩美達の頭を撫で回した。

「これ位当然です！」

「そう？それが出来ない子供も結構多いんだよー？」

Aはいとも簡単に子供達の心を掌握し、この状況にも関わらず不安の一つも感じさせないよう、明るく話している。
灰原の見ている今のAの姿からは、先程キュラソーと対峙していた時の様な冷たさは何一つ感じられない。

(吉田さん達が言っていた通り、確かに別人ね…)

今は外に出る方が危険だと判断したAはゴンドラの中で腰を下ろした。
子供達からすれば辺りは暗闇に包まれ、どこからか聞こえる謎の衝撃音、揺れるゴンドラ、取り残されたという恐怖ー
今こうして笑って会話をしているのが奇跡な位だ。
少しでも子供達の不安を払拭すべく、Aはぼんやりしそうな頭を必死に働かせた。






その甲斐もあってか、すっかり笑顔を取り戻した様子の探偵団を見たAは人知れずホッと一息ついた。

「さっきの拳銃…」

灰原は小声でAに話しかける。

「ん？」

灰原は横目でAを見ながら問う。

「拳銃は海の底なんじゃなかったの？貴女、さっき武器は持ってないって」

「あの人に使った拳銃は、1000万の車と一緒に東京湾の海の底。
あの時の拳銃は海の底って言っただけで、私は丸腰だなんて一言も言ってないよ。」

「……天性の嘘つきね。」

「今回は嘘ついてないけどね。
まぁ詐欺師にとっては褒め言葉です、ありがとう。」

「詐欺師…？」

「うん。」

「……」

「……」

「……助けてくれて、ありがとう。」

「どういたしまして。」

頭を優しく撫でてくれたその手は、灰原が失った最愛の姉のものによく似ていた。

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