【十五】 銀の夜 その1 ページ15
あれからずっとりんと他愛の無い話が続いている。
邪見は、あれきり口を挟むことなく
ずっと阿吽の体に背を預けて目を閉じている。
ーーーーー
(邪見様は眠ってしまったのかしら。)
「ねえ、Aお姉ちゃん…」
またも、可愛らしくも静かに私を呼ぶ。
「ん?」
きょとんとしながら、りんちゃんの
眠そうな目を見つめながら頭を撫でる。
「りんはね…」
「お父さんやお母さんを野党に殺されてね…」
可愛らしい彼女から突然紡がれた言葉はとても
残酷で、痛々しく歪む幼い顔に胸がぎゅっと
締め付けられた。
(まだこんなに幼いのに…そんな事が…。)
りんちゃんの境遇を思うと胸が痛む。
きっとりんちゃんは私の何千倍の痛みを
受けたはず…。
そう考えると自然と抱き締めていた。
「Aお姉ちゃん?」
突然の抱擁に少し驚きながらも
「凄く辛かったけどね、今は殺生丸様や
邪見様と一緒に居られて幸せなんだ!」
と笑顔で、そして嬉しそうに話す。
「あとね、Aお姉ちゃんと居ると何だか
すごく安心するの!」
「!!」
(見ず知らずの、しかもなぜ封印されているのか
何も覚えていない私なのに)
少し驚いたが、りんの言葉を受けとてもあたたかい気持ちになる。
素直に伝えてくれたりんに対してAも素直に
「ありがとう。」
と、抱き締めながら頭を撫でると
耳元でりんちゃんが微笑む声がした。
(今夜だけは、安心して眠ってほしいな…)
丁寧に髪をとかし撫でながら眠りへ誘導する
と、そのうちに規則正しい寝息が
耳元から聞こえてきた。
Aはりんを起こさぬようにそっと腕を
抜き阿吽の尾に頭を降ろす。
そして、隆起した岩の上にいる彼を見上げ
気づかれぬ様に立ち上がり歩き出した。
ーーーーー
その頃殺生丸は岩場に自身の毛皮を背に敷いて傷の回復を待っていた。
下でりんと女の会話は嫌でも耳に入ってきていた。
(記憶がない…か。)
これでは、何も聞き出す事はできない。
自身の知りたかったことは何一つ得られない
という事になる。
その時
パリッ
岩の破片が崩れる音がした。
そして、あの女の匂いが近づいてくる。
「何の用だ。」
そう言い放つと
「すみません…傷が気になったので…」
そう言いながら、殺生丸の側にちょこんと座った。
「貴方様から奈落の邪気と障気を感じます…。
そのままでは、治るものも治りません。」
「……りんちゃんが…心配します。」
女は遠慮がちに目を伏せながらも
はっきりとした口調でそう告げてきた。
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神田(プロフ) - 面白かったです!!完結となっていましたが更新待ってます! (2022年5月23日 16時) (レス) @page22 id: cf3f4f58f3 (このIDを非表示/違反報告)
くすのき(プロフ) - ハヤさん» コメントありがとうございます!!とても嬉しいです!!頑張りますね!! (2020年10月27日 5時) (レス) id: b410419c53 (このIDを非表示/違反報告)
ハヤ(プロフ) - 小説見させていただきました!面白いです更新待ってます! (2020年10月12日 16時) (レス) id: b0e8ef1a15 (このIDを非表示/違反報告)
不思議の国の有栖さん(プロフ) - 犬夜叉トーク、ボ−ド内でやりとりしませんか (2020年8月11日 10時) (レス) id: 1031f2154f (このIDを非表示/違反報告)
くすのき(プロフ) - 不思議の国の有栖さんさん» お返事が遅くなってしまいすみません。小説を読んでくださりありがとうございました!有栖さんのページを見させて頂きました。 犬夜叉トークが出来たら楽しそうですね♪ (2020年8月10日 21時) (レス) id: b410419c53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くすのき | 作成日時:2020年5月21日 2時