【名探偵コナン】笑って、マイヒーロー【紺.青.の.拳】

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　周囲から風や生活音は聞こえないことからも屋内に居るのだろう
　少し離れた所でくぐもった声が聞こえるのを感じ取れば、扉を挟んだ外側に誰か居ると推測出来た。しかも、正面から聞こえる会話を拾ってしまえば、扉の正面に座らさせられていることに気付く。
　
「――、――――」
「――！――」
　
　男らしき二人組の声が聞こえてくる。どちらも英語なので断片的にしか拾えないが、“女・捕らえる・金”というワードが入っていることから海賊である線が濃くなってきた。
　耳に集中してみるものの、男たちの会話以外は聞こえない。……となれば、この部屋に居るのは私一人だけになるのだろうか。
　
『(これは一か八かね)』
　
　蘭のように武道に心得えがある訳ではないが、私には強い味方が居るのだ。
　
『(力を貸してください、盗一さん！)』
　
　世界一のマジシャンであり怪盗キッドであった彼に、幾つか教えてもらったマジックを忘れた訳ではない。
　そして、いざという時に使える“縄抜け”を反復して練習していた当時が懐かしいかった。
　手元が自由なのは幸いだ。指先の細かい動きは不器用な私に辛いものがあったが、私が攫われたとなれば、園子の身を案じてしまう。彼女には京極さんが付いているものの、一般人に扮した海賊がどう行動しているか分からない。
　あの二人は喧嘩しているし、今の園子であれば京極さんよりも違う誰かの言葉に耳を傾ける可能性もあった。
　
『っ、』
　
　結び目が少し緩んだのが幸いだ。高難易度の縛り方であれば流石に出来なかったかもしれないが、女であり何もできないと思われていたようで、力ずくで縛られていただけのようであった。
　手首の縄を解いたのと、扉の前に居た男たちの声が聞こえたのは殆ど同時だった。いきなり扉を開けられた音を感じて胃がすくみ上る感覚を覚えたが、私の姿が変わらないことに男たちは安堵したようであった。
　
「――！」
「――」
　
　勢いよく扉を閉め、鍵を掛ける音と男たちが駆け出していく音が聞こえる。遠ざかる足音に小さく安堵の息を漏らすのだ。
　
『(全然英語分からなかったけど、なにか急用でも出来たのかな？)』
　
　しかし、二人とも部屋から離れたのは救いであった。
　自由になった手で目隠しを取れば、真っ暗な部屋に一人で座っている状況であったと知る。
　ヘッドホンを捨てて、口布を解く。お腹と足首の縄に手を掛けた時、部屋全体が揺れたことに気付くのだ。
　
　

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