【名探偵コナン】笑って、マイヒーロー【紺.青.の.拳】

１６ ページ17

　
　
Side.キッド
　
　どうしてもAの声が聴きたくて、意を決して電話を掛けてみた。
　世界最大級のブルーサファイア“紺青の拳”を狙って予告状を出し、シンガポールへ。そこでAと再会することになるとは思わなかったけれど、気を緩めれば浮かれてしまう自分がいるのだ。
　
「冷静になれよ怪盗キッド。これだから名探偵に茶化されんだ」
　
　一瞬にしてお馴染みの服に着替えれば、俺は怪盗キッドになる。
　彼女の声も聴けたことだし、気持ちを切り替えて早いとこお宝を頂いちゃいますか。
　じいちゃんに改造してもらったエンジン搭載のハンググライダーを使って高層ビルから飛び降りる。
　――この時までは、レオン・ローに一本取られるなんてこの時は思ってもみなかったのだ。
　
　名探偵としてレオンと握手を交わして得たヤツの指紋。それを利用して突破したまでは良い。マーキングしていた箇所が見つけられたまでは良かったが、それをレオンに見越されていたことには驚いた。
　ヤツの部下だと言うヘッズリ・ジャマルッディンの猛攻を躱していたら背後からレオンによってテーザー銃を使用されたのだ。
　気を失っている間に閉じ込められ、金庫内を水が浸食し始める。気付いた時には部屋の中全体が水に浸かっていて、金庫内に水が充満するシステムが隠されていたことにこの時初めて知らされるのだった。
　
「(オイオイ、勘弁してくれよ)」
　
　周囲を注意深く見渡しながら脱出経路を考えた時、不意にAの発言が脳裏を過った。
　
“下は水路なのか”
　
　Aがなぜレオンが伝えなかった金庫のシステムを知っていたかは知らねーが、下が水路だと知れば俺の取る行動は一つ。
　懐から取り出したトランプ銃を使って、中央に聳え立つ柱に切り込みを入れるのだ。
　
　
　

１７→←１５

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す