華麗なる奇術師たち 3【怪盗キッド】

125:歩幅をあわせて ページ29

「へっ？私が？？
いやぁ、なんていうか見張ってはいないよ、私は
どっちかというと憐れんでたっていうか」


「憐れんでってなんだよ(笑)
プライベートまで監視されているみたいだから？」

彼はその髪を触りながらすこし困った顔をした


「そうだね、なんかいろんな意味で、いろんな人に
見張られてるって感じで
でも本人はそこまで気にしてないみたいだから
なんか大丈夫かなって考えてたりもしたよ」


「坊っちゃま、A様は見守ってくれてたってことですね？」

「寺井ちゃん、なんで俺に聞くんだよ
でもまあ、俺も気にしてなかったわけじゃねーよ
毎回気にしてちゃもたねーし、
プライベートでどうこうするって感じでもないからな

確かに煽られたりはしたけれど
めんどくせーとしか思わなかったしな」


「らしいね」

彼はいつも自然体で何も変わらない
それが強みでもあるのかなと思った


「おっと車とめられそうですね」

「おー、寺井ちゃんお疲れ様」


「じゃあちゃちゃっと偵察と行こうぜ」

「え、今とめてくれるって…ってえっ！
ちょっとまっ…」

寺井ちゃんがふと一時停止をした瞬間に、
しびれを切らしたのか、快斗が隣にいた私を引っ張り
車から降ろしたのだ


「寺井ちゃん、ちょっとA行ってくる！」

「ぼ、坊っちゃま、A様いってらっしゃいませ」


いきなり降りないでください、ってきこえたけれど
お構いなしに私を連れて入り口に向かう


「快斗、急にどうしたの？」

「いや、なんか見覚えがあるやつの姿が見えた気がしたからよ」


足早にずんずんと進んでいくから、ついていくのも精一杯だ
なにせ彼は足が長いから

ちょこまかちょこまかと小走りで頑張っているが
もう若干引きずられている気さえしてくる

「快斗、もうちょっとゆっくりで…」


「えっ？あ…ごめんな」
はたと我に返ったらしく、急に止まったので
彼の背中に突っ伏してしまった


「う…ごめん、こちらこそ…」
めっちゃくちゃぶつかってしまったんだけど
大丈夫だ、怪我無いかと心配そうに言ってくれた


「あの、それにもし彼に私がいるのを知られたら、
私といるのが誰だってなるから
怪しまれると不利になるかもよ？」

「Aのこと、奴はどれだけ知っているんだよ？」
覗き込んで私のおでこが腫れてないかを確認したのか
私の前髪を少し払って覗き込んだ

(無駄に照れるんだけど…
こういう抜けたとこあるんだよな、彼は(笑)
そんなことで痣にはならないよ)

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