華麗なる奇術師たち 2【怪盗キッド】

85:言い伝え ページ36

「………わりぃ、
かなり焦った」


(ぇ？)


「オメーが、その…


白馬と一緒にいてさ
見つかってバレた思ったらさ」



「ぁ……そうだよね、ごめんなさい
私も上手く回避できなくて
回避できればこんなことにはならなかったのに」

(彼はすごく心配してくれてたんだ
申し訳なかったな……)




「いや、冷静になれなかったのは
俺の方が、だよな……」



「…そうなんだよね、あの鍵さえ開けられれば…
ん？…

…どういうこと？」


「Aさ、ナイトメア・ボールの言い伝えを知ってるか？」


「言い伝え？えっと…
………さっきシロヤマとかいうおじいさんがいってた光がどうとかってやつ？
証明が特殊で」


「ちげーよ、それはそのものの扱いとかの話だろ、事前に調べたからそんなことったぁ、知ってたぜ、あの話PRに載せまくりだったしよ

俺がいいてぇのは言い伝えだよ」


「そんなのあったっけ………？
ごめん、覚えてないや」

(一応一通りあれについて調べてみたけど
そんな話あったような、なかったような
普通に忘れたっぽいな)


「あれを、あの宝石を持ったものは悪夢を吸いとられる、っていう言い伝えがあるんだ」


「え？」



「あの宝石は人々の悪夢の塊だ
そう思うとそのまんま悪夢の石だな


………それは手にしたものの悪夢を吸いとり
それだけ輝くという言い伝えがあるんだ

悪魔が輝くなんて、
俺的には想像できねーんだけどさ
でも実際に悪夢で不眠だった当時の家主が眠れるようになったとか、その孫のとなりに置けば赤ん坊が夜鳴きしないとか
幽霊屋敷に置けば、魔除けにはあまり効果的ではないが、寝ることさえ出来ればなにも邪魔されず寝れるのだとか…」




私はただ淡々と語る彼を見詰めて
耳を傾けていた


「………それを俺が聞いたとき
Aに渡そうって思ったんだ………



パンドラでもspotlightでもなくても
Aのために宝石を届けよう

そうすればAの悪夢は消え
宝石は輝く



………でもいざとなると出来なかった」


私の中で疑問がうごめきだす
彼は少しはぐらかしているようにも聞こえた

「え？どうして？………宝石、持ってたでしょ？

狩り、手にすることに成功してたし……
結局どっちにしろお目当てのものじゃなかったから白馬君に渡したんだし

それに私に、って」




「……Aに、


おめーのために
……せっかく手にいれたものをAに渡せなかった
俺の私情が邪魔したんだよ」

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