華麗なる奇術師たち 2【怪盗キッド】

71:いきなりすぎて ページ22

男の子が誰かと話していて
ちゃんと前を見てなかったから
Aにぶつかりそうで


俺は咄嗟に腕をつかみ
グッと彼女を引き寄せた


「ぇ！？」
引っぱられたAは意図も簡単に
俺の腕の中に入る
彼女の肩が自分に触れた
やけにスローモーションのような一瞬だった

柑橘系の匂い、Aの家のシャンプーかボディソープの匂いがする

(確かシトラスの香りだったよな)


「ちょ、何をっ

あの？……」

「ぁ、わりぃわりぃ」

(ぁ、やべっボーッとしてたぜ)

思わず彼女をみつめていた
気付いたときには彼女が顔をあからめて
こっちを見上げていた


「小さい子が気になってぶつかりそうだったからな、つい」
とAを放した



「ぁ、……そうだったんだ、
あの…ありがと」
と素っ気なくそっぽを向かれた


(あれ、急に腕つかんで痛かったか？)
少し沈黙が続いた


「……怒ってるのか？」



「……

ん？……え？何？」


ボーッとしてたらしいAが
慌てて反応したように
目をまるくして俺をみる



「あれ？怒ってなさそうだな

ならいーんだけど」



「……ぁ// …うん


…べ、別に怒ってないよ
怒ってないから///」

とまたあっち向いてしまった



(んー女心って分からないなあ)

なんか気まずくなってしまった
彼女は少し落ち着かないのか
カールさせた髪先を少しつまんでは
放したり、手ぐしをしている

その白くて細い指の先が少し赤くなって
少し震えたようにみえた



A side





急に引き寄せられて驚いた…

けれどももっと焦ったのは
それだけの感情じゃないことに戸惑いを感じた


(なにこの感じ、
久し振りに外でしかもお出かけで
舞い上がってるのかな？…
落ち着かない

…どうしてか分かんないし
いきなり行動起こす黒羽君が
何を思ってるのかも分からないし


顔は火照るし、緊張してるし……


で近くには、私の斜め横に並んでる男女…
仲がいいのは別にいいんだけれど
イチャイチャし過ぎてるわけで
どうしても視界に入るし
目のやり場に困る…)

外にいて体は少し冷えているのに
顔辺りが火照っているせいか熱い

喉がトクトクとなっているような感じ
…気持ちを落ち着かせようと思っても
どうも自分のペースにならない
自分でも気持ちが浮わついているのが分かるから落ち着かない

(……困ったなぁ
注意が散漫だ、お気楽なことしに来てる訳じゃないことは重々分かっているはずなのに)


「……怒ってるのか？」


(ぇ？…

…なっ何？)

72:混乱状態→←70:行列の中で

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す