華麗なる奇術師たち 1【怪盗キッド】

35:病み上がり ページ35

時計をみるとまだ時間がある
…あと30分だけ

もう少しだけこのままでもいいかな
なんて思った

体温を感じていたかったのかもしれない

30分だけ一緒に寝て
スマホでかけてたタイマーで起きてそっと抜け出してきた


学校のAは秀才ぶるキャラを作ってる

あまり他人と話さなくてもいい、
１人で平気な雰囲気を出しておけば
無理に関わらなくてもいいし、
それについて気を使わなくてもいいから
何よりボロが出なくて安心できる

徹底的なものになりきろうと思ったのか分からないけど、私は律儀にしっかり学校にも行っていた


でもこの仕事には結局は手放せない
もしものことがあって素性がバレたら、
学校を捨てて仕事を優先すると思う

目的のために他に道はないから

神田さんは現地で集合予定

なにかと忙しいらしくて、
なんでも外国の両親と私の間を
行き来しているらしい

神田さん自身も大変そうだから、
自分のことは自分で出来るだけやろうと思ってた


少し遅れると連絡が入ったので、
１人でリハーサルをした

正直、両親には負けてられないと１人で信念を燃やしてたっていうのもあるかもしれない

真剣にやっていて、
いつの間にか客席で見守っていた神田さんに気付かなかった



他に誰かが盗み見てたなんて知る由もなかった

……



今日もマジックを
気分転換に昨日とは全く違うものにした

『毎日毎晩そんなになるほどやってたら、好きなマジックも嫌になるし』

ふと彼の言葉が浮かんでくる


そうだね、そうかもしれない

でもこれは兄と私を結ぶものでもあると思うんだ
もっともっと磨いて

いつか彼の存在を知ることが出来る日があるって信じてる


今回はテレビ局もきてるらしいから
それなりに自分の宣伝にもなる
そう意気込んでいたんだけど


残り8分位でクラッとした
ライトアップも急に変わったから眩しくて
余計に顔がものすごくひきつってるだろうなって

意識も朦朧としてて、
もうそろそろ限界かもしれない
そう思ったとき



いきなり真っ暗になる
勿論、こんなの計画にはない

大体やりかけだし
停電？

一旦中断になったら全て消えるやり直し
フェアにいかないといけない

このマジック、一からやり直し？
最後の〆のマジックだから大変なやつなのに
信じられない

瞬時にそう思った瞬間、
一気にやる気を失い…
体が傾いた


暗いなかで人影が見える


…誰だろう…神田さん？
真っ暗で誰も分からない

意外な人の声が聞こえた

『おい……大丈夫か？』

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