第３３８話 ページ9
ねえよ、と快斗はちょっとだけ怒るように言った。ええ〜と言い返す。
「紅子に絡むと大体めんどくせえことになんだよ……」
「でも紅子さんにも何回か助けてもらってんですよね」
「それとこれとは別問題だろ……紅子が勝手にやってることだし」
快斗は呆れた風だった。紅子さんに呆れているのか、紅子さんに頼みに行った私に呆れているのかはわからないけれど。でもと反論しようとすると快斗はあ〜と頭を掻いて、息をついてから頰を指先で二、三度掻いた。
「紅子なんか頼んなくても、俺が迎えに行ったのに」
予想外な発言にちょっと驚いた。目を見開いて何も声を発せなくなってしまう。
「香りとか気にしないで、ちゃんと迎えに行こうと思ったのに」
また私は何も言えない。嬉しいんだか、びっくりしてるんだか自分でもちょっとわからない。心臓がキュッと締まる気分。迎えに行く、というワードが無性に心をドキドキさせた。出て行ったのは私なのに。貴方は迎えに来てくれるのか。
「え〜じゃあ組織で待ってた方がよかったか」
笑顔を押し殺して、冗談っぽく言ってみる。快斗は冗談っぽく笑って見せた。嘘の笑顔を作るのが得意な怪盗さんだなあ、全く。私はでもそれはそれ、これはこれと切り替える。
「じゃあ適当にそこらへんに転がってた靴下でも持っていこうかな」
「は！？」
今までのロマンチックなくだりを全て茶番に。私は靴下の片方を茶封筒に入れて封をして、切手を貼って家を飛び出した。多分一分もかかってない。快斗がボーゼンとしているのを傍目に素早く全てを終わらせた。ポストは黒羽家をでて大通りに向かうすぐそこにある。さっさと出して、家に戻った。
「よりによって靴下なんか……片方だけでどうすんだよ」
玄関で快斗が待ち構えていた。走って追いかけられていたら、捕まってたかもなあ。
「タオルとかなんか完全なものより半分のほうが威力半減しそうじゃない？」
「おめえ……」
悪びれもしない私を見て快斗の額に絵文字のような怒りマークが浮かんだ気がする。そんなの紅子さんのことが嫌なんだろうかーーあ、嫌なのは紅子さんか。
「ごめんなさいもうしないです、許してください」
満点の笑顔で謝ると流石に沸点に達したのか「にゃろ……」と結構ガチで快斗さんは怒るそぶりを見せる。ーーだけど。
「……でもこんなやりとりすんの久々だな」
思い出したように、そう呟いた。怒りを通り越して呆れなのか、はたまた別の感情か。
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匿名 - 初めまして。楽しく読まさせて頂いています。一つ尋ねたいのですが195話で言っていた「零」シリーズ？はどこに行ってしまったのでしょうか？読みたいのですが見当たらなく…もし公開していないのであればぜひ公開してほしいです。宜しくお願いします。 (2022年1月11日 19時) (
レス) id: 0d9a3fa9b5 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - とっても面白いです。続きを楽しみにしてます。 (2021年6月26日 20時) (レス) id: 2e973fc2c9 (このIDを非表示/違反報告)
pandahero(プロフ) - もしこのサイトを開く機会があれば、またほかのサイトで書くことがありましたら、ぜひまた読ませてもらいたいと願うほど、本当に素敵な作品でした。ありがとうございます (2021年5月12日 12時) (レス) id: 6df71f9a53 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 本当にとても面白かったです！更新待ってます!!! (2020年8月5日 22時) (レス) id: 12db53baf5 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - ただの純愛じゃなくて、少しドロドロ？してて面白いです！組織がやってることブッ飛んでるな、とか思いつつ笑 快斗と主人公がこれからどうなるのか、組織にまたまた捕まってしまうのか展開が楽しみです！更新楽しみにしてます！ (2020年5月28日 23時) (レス) id: 9f6637cdbb (このIDを非表示/違反報告)
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