【怪盗キッド】奇術師と道化師 捌

第３３７話 ページ8

帰宅してーーというか帰宅する前から快斗はずっとぶつぶつ独り言を言いながら考えていた。私も寺井さんも邪魔はしない。さてこのIQ400の怪盗はどんなショーを計画するのだろうか。夕方のニュースでも麒麟の角について取り上げられている。どうやら相談役は早く盗りにこい、早く対決しようと煽っているようだ。……あんなにボロいお寺なのに。その余裕はどこからくるのだろうか。

「子供……」

わざわざ子供にこだわらなければショーの計画も楽に立てられるんじゃない？ なんて勿論口には出さないがそう思ってしまう。しかし「こう！」と決めた時の快斗は一直線だ。そのゴールにたどり着くまでの答えを必ず作り上げる。全く、すごいなあ。

「あんまり根詰めても意味ないんじゃないんですか？」
「……そうだな。でも満月のときにあわせたいから……とすると一週間だしな」
「ハードスケジュールだねえ」

うーんと快斗はまた唸る。何で満月の日に合わせるかは別に聞かなくてもわかるが、次の満月の前後は台風が来る天気予報だったような。流石に雨風はこのドロボーさんもよっぽどのことがないかぎり退かせなそうだ。……魔女の力を借りれば別だろうがーーあ、そうだ魔女。

紅子さんになんかお返ししなきゃ。いや忘れていたわけではないが、夏休みの宿題のようにいいやいいやと思って後回ししてしまった感じだ。……夏休みの宿題なんてものに取り組んだことはないが。

「ねえ快斗、いらない衣類とかない？」
「は？」
「衣類っていうかタオルとかでもいいんだけど、なんかない？」
「何に使うんだよ」
「……夏休みの宿題？」

適当な嘘を言ってもうまく誤魔化せないので、思いっきり茶化してみる。

「なんか言いづらいことかーー組織のやつ？」
「はずれー」
「じゃあ紅子だ」 快斗は得意げに笑って見せた。
「え、何でわかんの」 素で驚いてしまう。

快斗は首、といって私を指差す。……なんだ気づかれていたのか。

「帰って来てから妙なネックレスつけてると思ったから。それで香りの件も急になくなったし、なんとなく紅子かなって」
「末恐ろしい〜」

なるべく見えないように服で隠したりしていたんだけど意味なかったかーーあ、そもそも帰って来てしょっぱな風呂上がりで廊下ですれ違ったんだと思い出す。

「紅子になんか言われたのか？」
「快斗のなんか持って来てって言われた」
「だから学校で妙に睨まれてたのか……」
「事情がわかったならなんかいらない衣類とかないですか？」

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