【怪盗キッド】奇術師と道化師 捌

第３６２話 ページ33

中森警部の方に行こうとしたが鈴木相談役や日売テレビの人と話し合っているし、工藤新一サイドにこれ以上口を出すわけにもいかないし。
さてどうしようか。部屋の中央にある麒麟の像を眺めようか。

雨は気づけば止んでいる。雨が降ってなかったら、転ばないで済んだんだろうか。
けどどうせ幼児化しちゃうんじゃ意味なかったか。
この件が片付いたらこのまま工藤新一サイドについていくのもありだな……と江戸川コナンの方に視線をやった。

「わ、わかったの？ コナン君！ キッドがあの中の誰に化けているか……」
「あぁ……」

流石名探偵〜！ 私は足を音を立てないように子供達の方に近寄った。
『工藤新一サイドにこれ以上口を出すわけにもいかないし』なんて、前言撤回だ。
紆余曲折を経て、なんだか色々わからなくなっているが私はもともと工藤新一のファンじゃないか。
ショーにハプニングはつきものだよね、快斗。

「この寺の敷地内のどこかにキッドがスリ替わった人物が監 禁されているだろーから、外の隊員に連絡してーー」
「その役目、私がやろっか？」

元太君をグイッと押し寄せ、江戸川コナンの顔を覗き込んだ。
少年探偵団の視線が一斉にこちらを向く。

「あら？ 随分と私たちに協力的じゃない？」 皮肉めいた風にシェリーが言った。
「だって暇だし」
「一応、キッドのファンとしてここに入っているんでしょ？ 貴女は」
「そう……私は招かれざる客なんだからさ。そろそろ物語に関わったっていいでしょ？」
「でも確かに……外の隊員やここの機動隊の人の中にキッドの手下がいるかもしれないと考えると、キッドが変装できないこのAさんに頼んだ方がよくないですか？ コナン君」

ハッとしたように光彦君が述べた。
この子こそ本当に小学一年生、なんだよな……？ と疑うくらい機転が利く。
しかし江戸川コナンが「いや、ここにはキッドの仲間はいねーよ」と否定する。


いるけどね。ここに。なんて。

表情には出さずに、心の中で少しだけ笑っておこう。

「……何も知らない四人の手下を利用してな！」
「よ、四人の手下って……」
「まさか……」
「ああ。そのまさかだ。四人の手下はおめーらだよ。詳しく説明してやっから」

IQ400の怪盗が頑張って精製した問題を名探偵は解いてしまったようで。
流石流石と、また心の中で少しだけ笑っていると探偵と目があった。

「じゃ、Aサン？ おめーは変装されちまった人物を探し出してくれ」

第３６３話→←第３６１話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す