第333話 ページ4
翌日。身支度を終えて寺井さんの店ーーブルーパロットへ。本日臨時休業と書かれた張り紙がある扉を開け店の中に入った。
「ジイちゃん、準備できてっか?」
「勿論でございます。さ、行きま……ってAさん?」
「どうもどうもご無沙汰です」
形だけぺこりと頭を下げる。寺井さんは「お久しぶりです」と言って私に頭を下げる。私はつられてもう一度頭を下げる。多分、寺井さんは私に何か言いたげだ。しかし何も言わない。なら詮索することもないーーか。
「行こーぜ。ジイちゃん、A」
「ええ」「はいはーい」
店を出て、車に乗ってビッグジュエルーー麒麟の角が見つかったお寺を目指す。道中、ラジオやテレビ、インターネットで麒麟の角について情報収集を行う予定だったが……。
『こんな山奥にビッグジュエルがあったんですねえ! この大きな琥珀に怪盗キッドは食らいつくのでしょうか?!』
プロパガンダもいいところだ。どの局も、どの新聞も少なくともこのような煽りでビッグジュエルについて取り上げられている。さすが鈴木財閥だなと思い私はスマホをポケットにしまう。
「めちゃめちゃ喧嘩売られてんじゃん」
「そーだな。あの琥珀、見つかったの昨日くらいだろ? 相談役、行動はっや」
「金持ちパワーだね。でも昨日の今日でいつでも盗みに来いなんて、随分余裕だね」
「だな……」
「貴方はなんかプランあるの? 怪盗キッドさん」
私は窓の外を眺めながら尋ねた。都心部からそこそこ離れているため、景色は緑色が多くなる。風も心地よさそうだし、ちょっとしたピクニック気分になってしまう。助手席に座る快斗はそうだな、と少し考えてから「子供かな」と呟いた。
「子供?」 聞き返したのは寺井さんだ。快斗はああと頷き、
「鉄狸で若い女性、絡繰屋敷で老人。……警部や白馬にも化けたことあるけど、子供はまだねーしな」
「寺井からしてみたら、坊っちゃまも十分子供ですよ」
「そう言うことじゃなくて……わかりやすくあの名探偵のオトモダチに変装できねえかなって」
快斗はルームミラー越しに私を見る。子供に変装するなんて、いくら快斗でもーー怪盗キッドでも難しいだろう。でも「子供になれる」というイリュージョンを相談役や中森警部、そして名探偵に披露することができれば今後の怪盗キッドの活動の幅が広がるだろう。
「子供に戻ったって、いいことないよ」
「戻るんじゃねーよ。変装だっての」
なんて言い合いをしていると目的地のお寺に到着した。
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匿名 - 初めまして。楽しく読まさせて頂いています。一つ尋ねたいのですが195話で言っていた「零」シリーズ?はどこに行ってしまったのでしょうか?読みたいのですが見当たらなく…もし公開していないのであればぜひ公開してほしいです。宜しくお願いします。 (2022年1月11日 19時) (レス) id: 0d9a3fa9b5 (このIDを非表示/違反報告)
あんこ - とっても面白いです。続きを楽しみにしてます。 (2021年6月26日 20時) (レス) id: 2e973fc2c9 (このIDを非表示/違反報告)
pandahero(プロフ) - もしこのサイトを開く機会があれば、またほかのサイトで書くことがありましたら、ぜひまた読ませてもらいたいと願うほど、本当に素敵な作品でした。ありがとうございます (2021年5月12日 12時) (レス) id: 6df71f9a53 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - 本当にとても面白かったです!更新待ってます!!! (2020年8月5日 22時) (レス) id: 12db53baf5 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴(プロフ) - ただの純愛じゃなくて、少しドロドロ?してて面白いです!組織がやってることブッ飛んでるな、とか思いつつ笑 快斗と主人公がこれからどうなるのか、組織にまたまた捕まってしまうのか展開が楽しみです!更新楽しみにしてます! (2020年5月28日 23時) (レス) id: 9f6637cdbb (このIDを非表示/違反報告)
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